ダットスキャン静注 症例集

●紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。

●DaTViewによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)

本態性振戦からパーキンソン病への診断変更

症例提供 : 天使病院精神科 山本 晋先生、核医学画像提供 : 市立札幌病院

60歳台後半 男性(外国籍)

主  訴

四肢の振戦

現 病 歴

X-18年 :  2年前から手足がふるえると訴え、当科を初診。本態性振戦(ET)と診断。
クロナゼパム(CNZP)、エチゾラム、タンドスピロン、ビペリデン、プロプラノロールなどが使用されるも、無効(眠気やかゆみで不耐性)。半年で中断。その後はA病院精神科・神経内科に通院(ET)。

 

X-9年 : 当科再受診。四肢の振戦は上肢優位に安静時にもみられ、怒ったときや物をもったときに増悪。CNZPを再開するも眠気でアドヒアランス不良。βブロッカーも無効。

 

X-6年 : A病院神経内科を紹介再受診時、両手の姿勢時振戦のみでETと判断(ただし増悪傾向あり)、ジアゼパム(DZP)、CNZPを使用するも無効。同時期、排尿障害で泌尿器科より投薬あり。

 

X-2年 : 現主治医担当。日本語が通じず、意思疎通が困難。CNZPは眠気が強く、DZPは無効。
1度のプリミドン服用で3日間ふらつきと歩行障害が出現。

 

X-1年 : 受診時に通訳が同伴。MMSE 27点。

 

X年 :  DaTSCANを施行、その後、他の神経画像検査(MRI、心臓交感神経シンチグラフィ、脳血流SPECT)も施行。
神経学的には両上肢の安静時振戦と筋固縮及び姿勢反射障害を軽度認めた。
パーキンソン病(PD)の家族歴はない。心臓交感神経シンチグラフィは、著明な低下あり。Early画像におけるH/Mは1.52、 Delayed画像におけるH/M は1.26であり、Washout Rateは36.7%であった。

治療・経過

PDと診断。ロピニロール0.75mgを開始、現在同剤2mgで振戦は軽減してきている。

MRI
T2WI
T2WI画像
T1WI
T1WI画像

 

画像からは特に異常はみられない。VSRADadvanceでのVOI内萎縮度(Z-score)は1.23。

HMPAO-脳血流SPECT
3D-SSP(Decrease)
Surface GLB THL CBL PNS RT.LAT LT.LAT SUP INF ANT POST RT.MED LT.MED

両側頭頂葉、後頭葉、前頭葉の血流低下を認める。

DaTSCAN
Original画像

Original 画像

DaTView結果画像
DaTView 結果画像
SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

視覚的に両側被殻及び左側尾状核の集積低下を示していた。
また、SBRは6.22であり、当施設のファントム実験結果からも、異常所見と判断した。

参考 : 当施設でのファントム実験結果
 

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

 

SC(+)条件下では、SC(-)の約1.5倍のSBRを示した。当院ではSC(+)でDaTSCANの収集を行っているため、Boltらの論文1)で示されているカットオフ値4.5を考慮し、SBR=6.75を暫定的なカットオフ値としている。
※SC : 散乱線補正、CT/AC : X線CTによる減弱補正、+ : あり、- : なし

1) Tossici-Bolt et al. EJNMMI 2006; 33(12) : 1491-1499

まとめ

長年、本態性振戦と診断され、治療にもかかわらず症状が改善せず悪化傾向にあった。外国人のために意思疎通がとりづらかったが、DaTSCANの所見を機に精査を進め、PDと診断した。治療薬を抗PD薬に変更し、20年来の症状が軽減した貴重な症例である。