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ヨウ素125治療用密封小線源 前立腺がん密封小線源療法

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「ハイリスク症例に対する密封小線源療法の可能性」公演:Nelson N. Stone, MD Professor of Urology & Radiation Oncology, The Mount Sinai School of Medicine, USA、監修:斉藤 史郎先生 独立行政法人 国立病院機構東京医療センター泌尿器科 医長

4.術前から術後までの管理の流れ

この治療をはじめるための関係法令の手続きについて、原子力規制員会の定める放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)と厚生労働省の定める医療法について説明いたします。
なおこれ以外に労働安全衛生法に基づく電離放射線障害防止規則や消防法に基づく届け出などいくつかありますので確認が必要です。

放射線障害防止法は放射性物質の取り扱いや施設の基準を定め、放射線障害の発生を防止する目的で作られたものです。各施設では周囲への線量を一定レベル以下にして安全に使えるようにしなければなりません。

使用する放射性同位元素の種類や数量で各施設の境界や管理区域の境界および使用する部屋などでの線量が一定の基準以下であることを確認します。
このため治療に必要な放射性元素の種類や数量によっては構造設備の変更も必要になります。
申請の手続きは原子力規制委員会原子力規制庁放射線対策・保障設置課放射線規制室で行います。

各施設で使用する放射性同位元素からの線量は以下の基準になるようにします。

常時人の立ち入る場所の線量は1mSv/週以下。


管理区域境界の線量は1.3mSv/3ヶ月以下。


一般病室の線量は1.3mSv/3ヶ月以下。


事業所の業界・居住区域の線量は250μSv/3ヶ月以下にします。

この評価を行うにあたって、核種ごとの実効線量は放射能量×実行線量率定数×遮蔽材の実効線量透過率×時間÷距離の2乗で計算されます。
ヨウ素125の場合、実効線量率定数は1MBqあたり1mの距離で1時間当たり0.0124μSvになります。

ヨウ素125の遮蔽材となる鉄・鉛・コンクリートなどの厚さごとの実効線量透過率については原子力安全センター刊遮蔽計算実務マニュアル2015を参照ください。
(表6.1(46)放射性同位元素からの光子の実効線量透過率−125I−)

時間は治療病室などの使用施設で人が常時立ち入る場所は1日8時間 週40時間以上。
貯蔵室のある貯蔵施設では週1時間以上。
使用施設内に貯蔵箱を置く場合は貯蔵箱からの線量は週40時間以上。
管理区域境界は3ヶ月500時間以上。
病室や事業所の境界は3ヶ月24時間×91日、2184時間として遮蔽計算します。

距離は線源を点線源とみなしそこからの距離とします。
自室内の線量計算は線源から0.5mの距離として計算します。
なお小線源治療を実際に行う使用施設では、常時、立ち入り者の線量限度を1mSv/週を超えないように実際の1週あたりの挿入時間を使用時間として計算します。

主に前立腺癌の小線源治療に用いられるヨウ素125シード線源の場合はエネルギーが28keVと低く、遮蔽計算上大きな問題となることはありません。
予定している小線源治療数や余剰線源を考慮し、最大貯蔵数量は使用する予定の個別の放射能ごとに規格、数量を申請します。

例えば11.0MBqを500個 5,500MBq。
13.1MBqを500個 6,550MBq。
15.3MBqを500個 7,650MBq。
合計19,700MBqというように申請します。
なおこれまでと違い、線源は永久挿入されますので、線源管理という面からは一旦挿入された線源の数量は貯蔵数量から減らすことが出来ます。

使用最大数量は一人の治療に使うそれぞれの規格の最大の個数と考えられる120個程度で申請します。
例えば
11.0MBqを120個 1,320MBq
13.1MBqを120個 1,572MBq
15.3MBqを120個 1,836MBqとなります。
遮蔽計算上は同時にそれぞれの規格を使うことはありませんので最大の15.3MBqを120個 1,836MBqを用い計算します。

数量や規格のほかにヨウ素125シード線源の申請上の種類については
1.物理的状態 固体 
2.化学形等 ヨウ化メチル以外の化合物

3.密封の状態 ヨウ素125を銀線表面に化学的に結合させたものをチタンカプセルに溶接密封となります。

使用の目的は悪性腫瘍等の治療になります。
使用の方法は悪性腫瘍等患部への照射(永久挿入)
特にヨウ素125シード線源の場合はこれまでの密封線源と違い使用方法の中に永久挿入の文言を入れます。

医療法上の届け出は各都道府県となります。
申請方法は各都道府県で異なります。

届け出の様式は『医療放射線管理の実践マニュアル 日本アイソトープ協会』を参照ください。

放射線障害防止法の用語と一部異なります。
例えば放射線障害防止法では密封線源はすべて密封された放射性同位元素ですが、医療法では放射性同位元素の下限数量が1,000倍を超えるものを診療用放射線照射装置といい、下限数量が1,000倍以下のものを診療用放射線照射器具と言います。

医療法では放射線の利用にあたって、その安全管理のために放射線の種類や使用方法により、それぞれの専用の部屋が必要となります。
ヨウ素125シード線源による小線源療法を実施するにはこの線源1個当たりの放射能が下限数量の1,000倍の数量である1GBqに満たない密封された放射性同位元素を装備している照射器具にあたるため診療用放射性照射器具使用室と呼ばれる専用の部屋が必要となります。

この部屋は画壁などの外側の実効線が1mSv/週以下になるように遮蔽され、耐火構造で、通常、人が出入りする出入り口は1か所。そこには標識をつけ、この部屋の立ち入り者に対する注意事項も掲示します。

また障防法および医療法で貯蔵施設とされる線源を貯蔵する部屋または貯蔵箱が必要になります。遮蔽能力のある耐火構造の施錠できるもので標識が必要です。
余剰線源をこの貯蔵施設へ他の線源と区別できるようにして保管することになります。

医療法では脱落した線源の保管廃棄のための施設がいります。
ヨウ素125シード線源のみを取り扱う場合は密封された線源であるため廃棄や排水のための設備はいりません。
ヨウ素125シード線源に必要な保管廃棄設備とは、人がみだりに持ち出せないように固定したもので、その外側の線量が1mSv/週以下。鍵付で保管廃棄設備である旨記した標識や注意事項の掲示があれば部屋である必要はなく、保管廃棄箱でもかまいません。
また貯蔵施設または貯蔵箱に保管している治療用の線源や余剰線源とも区別できるようにします。

<補足>

2016年3月改訂