安定冠動脈疾患における虚血評価を再考する

安定冠動脈疾患に対する虚血評価の意義

第1回ディスカッション ~ポイント~
  • もう心筋シンチによる10%虚血心筋量の評価は不要なのか?
  • 安定冠動脈疾患に対する予後改善効果を目的とした血行再建は有用ではないのか?

香坂 第1回ディスカッションでは、定量的な虚血評価の必要性や、血行再建の有用性に焦点を当てて議論していきたいと思います。
ISCHEMIA 試験では10%以上の虚血症例に対し、侵襲的治療を行っても保存的治療戦略群との差が認められませんでしたが、虚血の定量評価は今後どのような扱いになっていくと思われますか。

永井 虚血範囲が広いとリスクは高まりますので、虚血の評価自体はリスク層別化に非常に重要と考えます。一方で、10% 虚血の評価の意義については、完全否定されたわけではないと思いますが、血行再建を行う判断基準となるかどうかについてはまだ決着がついていないと思います。

中田 10% 虚血の評価は決してゴールドスタンダードではなく、指標の一つとして捉えるべきと考えます。虚血量が多ければ多いほど相関して予後は悪くなりますので、虚血を定量的に評価することも重要です。また、虚血の評価だけでなく、患者の全身像を併せて評価することもリスク層別化を行う上で大切です。具体的には、患者の運動耐容能、心機能の状態、全身的リスクファクターなど、これらの評価もリスク層別化に加味することが重要と考えます。

香坂 虚血の評価がリスク評価の指標として重要であることについては、永井先生や中田先生のご指摘の通りであると思います。実際に我が国のJ-ACCESS studyにおいても、負荷心筋血流シンチの重症度(SSS)が増すにつれ、イベント発生頻度が高くなることが報告されています(図2)。ISCHEMIA 試験の結果は、虚血評価によるリスク評価結果と併せて患者の全体像を総合的に評価して血行再建の適応を考えていくことの重要性を強く示唆しているように思われます。

 

J-ACCESS study SSSによるリスク層別化とevent-free survival