紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
はじめに
近年、心筋シンチグラフィによる虚血評価の重要性が指摘され1)、またDEFER研究2)やFAME研究3)をきっかけにFFR(fractional flow reserve)による虚血評価の重要性が広く臨床に浸透してきた。これに伴い、安定した冠動脈疾患の治療の適応判断においては、冠動脈の形態的な狭窄評価から生理的な虚血評価へ臨床医の関心は変化している。
心筋シンチグラフィとFFRはいずれも虚血評価のモダリティとして利用されているが、前者は心筋虚血、後者は血管虚血と、評価対象の違いから必ずしも結果が一致しない場合もあり、その有用性や診断精度についてしばしば対立関係で論じられることも多い。ここでは、両者の特徴について述べ、さらに両者を組み合わせた治療戦略について考察する。
心筋シンチグラフィとFFRの利点と欠点を表に示す4)。心筋シンチグラフィは微小循環を含めた心筋虚血を反映していることが大きな特徴であり、その所見はCFR(coronary flow reserve)を反映していると考えられる(図1)4)。
負荷心筋血流シンチグラフィを含む非侵襲的虚血評価法と観血的FFRを組み合わせた虚血診断のフローチャートを図2に示す4)。基本的には冠動脈CTAで狭窄病変が疑われた場合あるいは判定困難であった場合には負荷心筋血流シンチグラフィにて虚血の精査を行い、異常があれば侵襲的検査に進む。
冠動脈CTAの結果、LCX>LADの二枝病変が示唆された。
多枝病変で心筋シンチグラフィにより虚血を認めた部位はFFRをスキップしてステントを留置。
心筋シンチグラフィで虚血を呈する1枝病変のためFFRは行わずステントを留置。
今回述べたように、得られる情報だけでなく実用面でも両者とも利点と欠点があり、それぞれの特徴を活かして診療に役立てることが医師にとっても患者にとっても重要である。