安定冠動脈疾患における虚血評価を再考する

軽度虚血症例に対する侵襲的評価の必要性

香坂 最近では軽度虚血症例に関しては保存的にフォローしていくことが強調されていますが、ISCHEMIA試験の結果を踏まえ、あらためていかがでしょうか?

永井 虚血範囲が狭い低リスクの患者に関しては、これまでのさまざまな研究結果を踏まえますと、保存的にフォローしていくことを優先せざるを得ないと思います。これについては、一定の結論が得られていると考えます。ただし、本当に虚血範囲が狭いのかについては適切に判断しなければならないと思います。

中田 軽度虚血症例に対してはすぐに侵襲的評価を行う必要性は低いと考えますが、ローリスクをどこまで担保できるのかという点に注意が必要です。すなわち、「ローリスクと初期に評価された人が、本当に3年後、5年後もローリスクであるのか」ということです。ローリスクであったとしても、数年後にハイリスク化する症例が現れるかもしれません。そのような症例には、 Multiple risk factorsを有していたり、服薬コンプライアンスが悪かったり、心機能が低下していたり、あるいは多枝病変のためシンチで過小評価されていたりするケースが少なからず存在するはずです。したがって、患者背景にも十分注意しながらフォローアップを行い、状況に応じ侵襲的評価の必要性を検討していくことが重要と考えます。

香坂 そうですね。中田先生のご指摘のとおり、軽度虚血症例をすぐにローリスクとして判断するのではなく、ノンコンプライアンスの症例や、何らかの問題によって十分な治療が受けられない症例等の存在にも留意しながら日常診療に取り組むことが大切だと思います。