ダットスキャン静注 症例集2
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
    「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
  • ● DaTViewによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)
  • ● DaTSCANによるSPECT画像の定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。

特発性正常圧水頭症(iNPH)とレビー小体型認知症(DLB)の合併

症例提供 : 順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターPET/CT認知症研究センター
井関 栄三先生

現所属 : シニアメンタルクリニック日本橋人形町 院長

80歳台後半 男性

主  訴

歩行不良、健忘、幻視

既 往 歴

大腸癌

家 族 歴

なし

現 病 歴

X-2年 : 健忘に気付かれ、聞いたことを忘れる、探し物が増えた。

 

X-1年 : 歩行不安定で転倒しやすくなった。また、「部屋に小人がいる」などの幻視が出現し、不安が強くなった。
その後、認知機能障害と歩行障害は徐々に悪化し、失禁もあった。

 

X年 : 当院脳外科を受診。頭部MRI、タップテストの結果から特発性正常圧水頭症(iNPH)と診断された。
その後、当科紹介され、記銘・近時記憶障害、注意・計算力低下、遂行機能障害、思考緩慢など比較的軽度の認知機能障害(MMSE 23/30)と、人物・小動物幻視、レム睡眠行動障害、寡動、小刻み歩行、動作時振戦などパーキンソニズムがみられた。
レビー小体型認知症(DLB)の合併が疑われたため、DaTSCANを施行した。

治療・経過

iNPHに対して脳外科で脳室腹腔シャント術を施行し、DLBに対しては、当科でドネペジル、クエチアピン、抑肝散を投与した。シャント術後も歩行障害の改善は十分でなく、レボドパを追加投与した。
X+1年現在、認知機能障害の進行は目立たず、歩行障害、幻視、情動不安は改善している。

タップテスト(X年)

判定 : 陽性(認知機能障害・歩行改善)

  タップテスト前 タップテスト後
MMSE 19 24
UP & GO 26歩/33秒 30歩/22秒

 

髄液流出抵抗 7.9(軽度上昇)
※:MMSE 3点以上、UP & GO 10%以上の改善をタップテスト陽性と判定

MRI(X年)
T1WI

T1WI画像

 

DESH型脳室拡大(Evans Index36%)と円蓋部脳溝の狭小化を認めた。

DaTSCAN(X年)
Original画像

Original 画像1

 

Original 画像2

DaTView結果画像

DaTView 結果画像

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

両側ともに線条体の顕著な集積低下を認めた。

まとめ

iNPHは、歩行障害、認知機能障害、失禁を主症状とし、頭部MRIとタップテストの結果から診断される。脳室腹腔シャント術により症状の改善をみることから、Treatable dementiaの代表とされる。一方、DLBは進行性に経過し、予後不良の変性性認知症である。認知機能障害、パーキンソニズムに自律神経症状を伴うため、iNPHの症状と重複するところが多い。このため、両疾患の鑑別が必要であるが、本症例のように両者が合併することも少なくなく、この場合、シャント術の適否が問題となる。歩行障害がiNPHによるか、DLBのパーキンソニズムによるかを鑑別するのにDaTSCANが用いられ、iNPHではDaTSCANで線条体の集積低下を認めないが、DLBないし本症例のようにDLBが合併すると集積が低下することから、両者の鑑別が可能となる。