- ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。 - ● DaTViewおよび3D-SSPによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)
- ● DaTSCANによるSPECT画像の定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。
アルツハイマー型認知症(AD)からレビー小体型認知症(DLB)への診断変更
主 訴 |
認知機能障害、物盗られ妄想 |
現 病 歴 |
X-2年 : 物盗られ妄想が出現し、近医を受診した。
X-1年 : ドネペジル5mg開始。症状進行に伴い10mgに増量されたが改善なし。
X年 : 当科初診。パーキンソニズムはなく、認知機能は遅延再生、言語理解および注意機能に障害が認められた。幻視を伴わない物盗られ妄想は改善せず。臨床診断をアルツハイマー型認知症(AD)とした。しかし、 IMP-脳血流SPECTで後頭葉の低下があり、また臨床的にはカプグラ症候群※がみられたため、レビー小体型認知症(DLB)の可能性も念頭にDaTSCANを実施した。 ※近親者などが偽者と入れ替わっていると確信する妄想 |
治療・経過 |
その後、寡動症状も出現し、DLBの臨床診断基準(2005年、第3版)6)の中心的特徴である進行性認知機能障害の他、中核的特徴(パーキンソニズム)、示唆的特徴(DaTSCANでの線条体への取り込み低下)が1つずつ認められたため、probable DLBと診断した。 |
「注意」、「言語(理解)」、「記憶」に重度障害、「言語(呼称)」、「構成」に中等度障害をそれぞれ認めた。
側頭葉内側部を中心とした大脳皮質萎縮を認めた。
後頭葉内側部、楔前部の血流低下を認めた。
両側被殻の集積低下を認めた。
■まとめ
本症例では全般性認知機能障害と物盗られ妄想を主徴とする進行性認知症であり、当初ADが想定された。しかし同時にカプグラ症候群や後頭葉血流低下がありDLBの可能性も念頭にDaTSCANを実施した結果、ドパミントランスポーターの低下という示唆的特徴が得られた。さらに経過とともに出現した寡動症状と併せてprobable DLBの診断となった。
病理学的にはアルツハイマー病理、レビー小体病理いずれも併存する症例と予想されるが、臨床像の明確化を重視し診断変更を行った症例である。