ダットスキャン静注 症例集2
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
    「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
  • ● DaTViewおよび3D-SSPによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」†を使用することで実施可能です。(† 承認番号: 301ADBZX00045000)
  • ● DaTSCANによるSPECT画像の定量的指標であるSBR(Specific Binding Ratio)は使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって異なりますので、その解釈には十分ご注意ください。

うつ病、妄想性障害との鑑別に難渋したレビー小体型認知症(DLB)

症例提供 : 医療法人 鳴子会 菜の花診療所北村 ゆり先生

画像提供 : 高知赤十字病院

50歳台後半 女性

主  訴

人に見られている感じがして、外を歩くのが怖い

現 病 歴

X-6年秋 : 「隣の人が家を覗いている」「家の中をビデオで撮っている」などと訴え、幻聴、妄想が出現。

 

X年-5年1月 : 誰かと会話するような独語、「覗かれている」という訴えが続き当院初診。不安感あるが、自発的には幻覚、妄想については語らず。神経学的には特記所見なし。

 

同年2月 : リスぺリドン2mg4日内服にて、幻聴は消失。眠気あり。

 

同年3月 : 眠気、活気のなさが続くためオランザピン5mgに変更。

 

X年-1年12月 : 幻覚、妄想なし。糖尿病と診断されたためオランザピン中止。

 

X年1月 : 「死ね、と耳に埋め込まれている」などの幻聴、妄想が再燃、リスぺリドン2mg開始。

 

同年2月 : リスぺリドン3mgに増量にて幻覚、妄想は軽快、家事もできるようになる。

 

同年3月 : 次の動作に移るのに時間がかかる、バランスが取れずバイクに乗れないとの訴えあり、軽度の固縮を認めたため、認知機能検査施行。MMSEは25点、立方体描画〇~×、RCPM19点(1回目)、23点(2回目)、ADAS9.6点、TMT(A)54秒(自己修正1)、TMT(B)1分12秒で中断(「分らない」と)、パレイドリアテスト40/40、コース立方体IQ47、認知変動、注意、視覚認知機能の低下を認めた。

 

同年4月 : レビー小体型認知症(DLB)が疑われたため、精査目的でMRI、脳血流SPECT及びDaTSCANを施行した。

治療・経過

Probable DLBと診断しリスぺリドン中止、コリンエステラーゼ阻害薬開始したところ、振戦は改善。「考えやすくなった」「外を歩くのが怖くなくなった」と述べ、幻覚、妄想の再燃はない。

MRI (X年4月)
FLAIR

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海馬の萎縮を含め、特異的な異常は認められなかった。

IMP-脳血流SPECT (X年4月)
FLAIR
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後頭葉の軽度血流低下が認められた。

 

3D-SSP(Decrease)

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DaTSCAN (X年4月)
Original画像
Original画像1

 

Original画像2

 

DaTView 結果画像
DaTView 結果画像

 

施設基準値及び患者の年齢を考慮し、軽度集積低下と判断した。

SBRは使用機種、コリメータ、画像再構成法等によって変動します。

まとめ

臨床的にはうつ病、妄想性障害と判断される症例の中に、薬物に対する反応の悪さや外的ストレスから、何とは言えない違和感を感じることがある。これらの症例に認知症を疑い認知機能検査を施行しても、認知症といえるほど認知機能は低下しておらず、DLBを疑いつつも、今までは確証が得られなかった。
本症例の認知機能はMild Neurocognitive Disorderのレベルであるが、抗精神病薬への過敏性、幻聴がみられた。 DLBのコア特徴としては認知変動しか存在せず、従来は診断に悩むところであるが、DaTSCANにて軽度の線条体の集積低下を認めたため、probable DLBと診断した。