かかりつけ医のための認知症診療Q&A 血管性認知症
  • 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • 3D-SSPによる画像解析は「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」*を使用する事で実施可能です。
    (※認証番号:301ADBZX00045000)

Q4.アルツハイマー型認知症と血管性認知症は厳密に鑑別ができるのでしょうか?

Answer
アルツハイマー型認知症の40%で脳血管病変の合併がみられ、血管性認知症の40%で剖検にてアルツハイマー病変を認めることが報告されています2)。両者は近縁の病態を示すことが近年強調されてきています。認知症に片麻痺などの運動障害がみられるとき、血管性認知症と診断しがちですが、脳SPECT検査を施行するとアルツハイマー型認知症に特徴的な血流低下を合併する事例もしばしば経験します。アルツハイマー型認知症を合併しているならばドネペジル(アリセプト®)の投与も可能となってくるので、血管性認知症と診断した患者さんでも脳SPECT検査を合わせて施行し、アルツハイマー病変の合併の有無を確認するほうがよいと思います。

アルツハイマー型認知症と血管性認知症の鑑別ポイント

 

アルツハイマー型認知症   血管性認知症
  • 女性により多い
性別
  • 男性により多い
  • 物忘れ
  • 時や場所に対する認識が混乱
症状
  • 知識をうまく使えない
  • 動作や会話での反応が遅い
  • 緩徐、知らない間に
発病様式
  • 階段状または緩徐
  • 欠如あるいは乏しい
病識
  • 持っていることが多い
  • 末期にならないと出現しない
神経症状
  • 片麻痺や構音障害を伴うことが多い
  • 幻覚や妄想など多彩な症状
精神症状
  • 抑うつや感情障害が多い
  • スムーズ
動作
  • 緩慢になることが多い
  • 高度に至るまで正常
歩行
  • 早期から障害されることがある
  • 転倒しやすい
  • やや高度にならないと出現しない
尿便失禁
  • 早期からみられることも少なくない
  • 脳のびまん性萎縮
CT、MRI
  • 脳梗塞や脳出血の所見
当初は血管性認知症と診断したが、脳SPECT検査の結果からアルツハイマー病の合併が疑われた症例

80歳代後半 男性 近医からの紹介


  • 構音障害と左不全片麻痺が出現し、脳梗塞と診断され近医に1週間入院した。退院後、薬の管理ができない、重ね着がみられる、整容がだらしなくなった、外出しないなどの症状に気づかれた。
  • 診察では年齢、月日、前日の夕飯の内容などは正答。
  • 脳SPECT検査後に、再度家族から病歴を聞き直すと、今回の脳梗塞出現より1年前からしばしば置き忘れやしまい忘れ、同じ事を何回も言うことが多かったことが判明。

MRI画像と3D-SSP解析画像

画像提供元:財団新和会 八千代病院

参照文献

2) Skoog I,et al. Vascular factors and Alzheimer disease. Alzheimer Dis Assoc Disord 13: S106-14,1999.

 

 

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