認知症 脳血流SPECT読影のポイント
  • ● 「警告・禁忌等を含む使用上の注意」等については添付文書 ご参照ください。
  • ● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
  • ● 3D-SSP/Z-Graphによる画像解析は、「核医学画像解析ソフトウェア medi+FALCON」を使用することで実施可能です。(※認証番号:301ADBZX00045000)
  • ● 本コンテンツで使用している画像の提供元:兵庫県立姫路循環器病センター

 

このページ内のコンテンツは症例提供いただいた近畿大学医学部 放射線医学教室 放射線診断学部門 教授 石井一成先生による音声と動画の解説がございます。本ページ内の「音声再生」をクリックすると音声が、画像内の「」をクリックすると動画が再生されます。

画像読影の実際 特発性正常圧水頭症(iNPH)

80歳台 女性 MMSE 21点

提示症例について 音声再生

症例の背景

主     訴
半年前からの物忘れ
既  往  歴
歩行は亀背(きはい)ながら独歩可能。

神経学的所見
鉛管様固縮があるが指位模倣良好。抵抗症(Gegenhalten)陽性、振戦はなし。
MRI

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iNPH疑い例の読影のポイント
高位円蓋部・正中部の脳溝狭小化、シルビウス裂開大、脳室拡大のDESH所見の有無を確認します。
海馬・海馬傍回の萎縮の有無を確認しアルツハイマー型認知症が併存している可能性が無いか確認します。

 

読影所見 (特徴的所見部位:赤丸)
脳室拡大、シルビウス裂開大、左頭頂部にポケット状の脳溝拡大を認めた。高位円蓋部の脳溝は局所的に拡大している部位もあるが、正中部の脳溝は狭小化が強い。
123I-IMP SPECT画像(横断像)

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iNPH疑い例の読影のポイント
脳脊髄液が貯留しているシルビウス裂や脳室周囲などでの血流低下様所見、高位円蓋部の灰白質密度増加による見掛け上の血流増加所見である「CAPPAHサイン」の有無を確認します。認知症の併存がある場合は、頭頂葉や後頭葉などで低下を認める場合があります。

 

読影所見 (低下部位:赤丸)
両側の前頭葉内側に血流低下がみられた。左頭頂葉やシルビウス裂にも低下がみられた。これは一見AD typeの所見であるが、MRI所見と照らし合わせると、脳溝の拡大やシルビウス裂の開大の影響によるもので、iNPHに特徴的な形態変化を反映した所見と考えられた。

※CAPPAHサイン:Convexity APPArent Hyperperfusion(河童)サイン
3D-SSP/Z-score画像

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3D-SSP/Z-score画像評価のポイント
iNPHでは脳の形態変化が大きいため、解剖学的標準化の誤差による偽陽性所見がシルビウス裂、頭頂葉、後部帯状回付近に現れる場合もあるので、MRIとの対比も必要です。Decrease画像でシルビウス裂周囲の血流低下所見であるチェックマーク(✓)サイン:check mark sign、Increase画像で「CAPPAHサイン」の有無を確認します。

 

読影所見 (低下部位:赤丸、赤矢印 保持部位:青丸)
脳表血流画像に一致し両側の前頭葉内側に低下がみられた。左頭頂葉や、シルビウス裂に沿った低下所見は、脳脊髄液の貯留やシルビウス裂の開大の影響によるものと考えられた。また後部帯状回の低下所見も拡大した脳室による偽陽性所見と考えられた。Two-tail表示のZ-score画像では頭頂部にCAPPAHサイン(青丸)がみられた。ADやDLBなどの後方型の認知症を疑わせる低下所見はみられない。

Z-Graph 解析結果

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左頭頂葉、後部帯状回・楔前部の関心領域で正常閾値を超えているが、脳脊髄液の貯留や拡大した脳室による偽陽性所見と考えられた。脳血流SPECT検査からはADやDLBなどの後方型の認知症を疑わせる血流低下所見はみられない。

読影(診断)結果についての解説

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MRIによる形態所見でDESH所見がみられたこと、脳血流SPECTからは形態変化に合致した低下所見とCAPPAHサインがみられたことから総合的に読影を行う必要がありiNPHと診断した。