ダットスキャン投影のポイントヘッダ

ダットスキャン読影のポイント (基本編)

基本的な手順として、ダットスキャンの視覚的評価及びSBRによる定量的評価を行った後、臨床症状(神経所見)・形態診断の結果も加味して読影を行う。

ダットスキャンの読影アプローチ

chart.gif

 

※三角形をクリックすると実践編の各ケースにリンクしています。

DLB : Dementia with Lewy Bodies, PS: Parkinsonian Syndrome,

CVD : Cerebrovascular Disease, VP: Vascular Parkinsonism,

NML : Normal, ET: Essential Tremor, DIP: Drug-induced Parkinsonism

  • 画像上の異常所見を確認→定量的評価の確認、臨床症状との一致・不一致、器質的な疾患の影響がないかを画像所見の裏付けをとった上で、診断や鑑別に活用する。
  • 所見と症状・定量的評価が一致しない場合は、画像のクオリティ・コントロール(QC)ができているかどうかの確認も必要になる。
SPECT画像の視覚的評価の分類

SPECT画像の視覚的評価のパターンは以下のとおり分類される。

SPECT画像の分類 分類基準
正常 両側被殻、尾状核への左右対称な三日月状集積
異常:パターン1 片側被殻は正常集積し、対側被殻後部に低集積(非対称性分布)
異常:パターン2 両側被殻集積が著しく低下し、尾状核に限局的、対称的な円集積を形成
異常:パターン3 両側被殻、尾状核に集積を欠き、BG集積が目立つ
正常例及び異常パターンの画像
正常例

両側線条体の左右対称な三日月状集積

尾状核、被殻にはほぼ均等な分布を示し、対称性の三日月状あるいはカンマ()型の集積として描出される。大脳皮質などの非特異的集積も描出されるが、線条体集積が強く良好なコントラストを示す。

異常:パターン1

非対称性の線条体集積

線条体に一側性の強い集積低下を示す。特に、PDでは一側性に運動症状が出現することから、対側線条体の集積が低下し、左右差を示すことが多い。また、運動症状発現と同側の線条体や両側尾状核頭でも軽度の集積低下を示す例も多い。線条体集積低下が強くなれば、大脳皮質などの非特異的集積が相対的に高く描出される。

異常:パターン2

尾状核頭の円形集積

被殻で集積低下が強くなると、被殻集積は非特異的な集積と同程度の集積レベルとなるため、尾状核頭のみに集積するように描出される。ドット(●)型の集積を示す。

異常:パターン3

びまん性線条体集積低下

線条体集積は両側とも強く低下して、本来低集積である大脳皮質集積などの非特異的集積とのコントラストを認めない。このため、画像としては非特異的集積が亢進したように描出される。DAT障害が高度に進行した状態やDLBなどにみられることが多い。

※正常例及び異常例の画像所見は、「日本核医学会・日本脳神経核医学研究会編 :
イオフルパン診療ガイドライン(2014年1月31日第1版)」より引用し、一部改変して掲載
POINT
異常所見の有無だけでなく、定量的評価、臨床症状を踏まえて診断
パーキンソン病類縁疾患におけるダットスキャンイメージ
PD
パーキンソン病
DLB
レビー小体型認知症
PSP
進行性核上性麻痺
MSA-P
多系統萎縮症
HD
ハンチントン病
NML
正常例
AD
アルツハイマー型
認知症
ET
本態性振戦
VP
脳血管性
パーキンソニズム
DIP
薬剤性
パーキンソニズム

● 画像上の基本的な所見

DAT低下
PD 初発する一側性運動症状に関連して対側線条体、特に、被殻後部で集積低下。線条体集積低下と運動障害との関連性が高いといわれている。
DLB 両側性に高度な集積低下を示すことが多い。臨床的にも非運動症状が中心となり、線条体集積も左右差が明らかでないことが多い。
PSP 線条体集積低下が強く、尾状核頭で低集積が目立つ。一方、PDと類似した被殻後方部で低集積となることもあり、定型的な集積低下分布とは限らない。
MSA-P 線条体集積の強い低下がみられる。本例のように必ずしも対称性低集積を示さず、左右差がみられることもある。
HD 運動症状側と対側線条体に集積低下がみられるが、集積低下は必ずしも高度でない。
DAT正常
NML 対称性、良好な線条体集積を示す。加齢、血管障害など種々の要因によって線条体後部でわずかに非対称性集積となることもあるが、線条体全体の集積は良好に描出される。
AD 軽度集積低下あるいは被殻後部にわずかな左右差が出現することもあるが、ほぼ正常例と類似した集積分布を示す。
ET NML例、AD例と同様に明らかな集積低下を示さず、大脳皮質集積に対して線条体集積は高い。
VP 線条体全体としての集積は保たれているが、線条体あるいはその近傍にラクナ梗塞などによる器質的変化を伴う場合にそれに一致した低集積がみられる。しかし、PDのような連続的な集積低下を示さず、限局的・不均一な低集積として描出される。
DIP NML例と同様に線条体集積は良好。しかし、潜在的にDAT障害がある場合は低集積を示す。そのような例では原因薬剤の休薬で症状が消失しても経過中にPDを発症しやすいといわれている。
※いずれも典型的なものではなく、これらのDAT分布低下は特異的ではない。
定量的評価の注意点

●加齢による変化

・健常成人志願者を対象とした123I-イオフルパン‐SPECTの健常成人データの収集に関する多施設共同研究の結果では、加齢とともに、SBRはほぼ直線的に10年間で6.3%の割合で減少する。6)

・女性は男性より平均で約3%高値を示し、特に若年層で差が顕著である。これは、エストロゲンホルモン発現の影響の可能性が推察される。6)

・読影に際しては、患者の年齢を考慮する。

 

■年齢と較正SBRとの関係

img15.png

* :研究参加施設は神戸大学、国立精神・神経医療研究センター、昭和大学、千葉大学、東北大学、中村記念病院、日本医科大学、藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)(50音順)の8施設で、256例、510スキャン(男性230スキャン、女性280スキャン)のデータより作成

● SWEDD

海外の臨床試験では、臨床診断でPDと診断されたにも関わらずDATに異常のない症例が5~20%程度あると報告されている。これらの患者はSWEDD(Scans Without Evidence of Dopaminergic Deficit)と呼ばれ7)、従来はPD以外の疾患と考えられていた。

しかし、最近の文献8)ではSWEDDの約半数はPDという診断のままであると報告されている。PDの病態の臨床的な変動が大きく、徐々に進行する疾患であるため、診断を見直すことが難しいことを示している。さらに、経過観察で診断不確定やDAT低下の診断に変更されている症例もあり、それらの患者がDAT低下の過程にあった可能性が示唆されている。

今後、SWEDDは「PDの早期診断」として捉えるとともに、運動症状発現前の診断と位置付け、抗PD薬臨床試験等への関与も考えられる。

 

* 本文献では、被殻のDAT密度が年齢相応の80%超で、かつパーキンソン症状がみられる患者をSWEDDと定義している。

 

● 判断困難事例では繰り返し検査を!

 加齢による線条体での集積低下は、年0.5~2.5%程度の低下を示すのに対し、PDでは年6~13%の低下を示すといわれている。2年のフォローで87.5%の割合で診断できるといわれている9)ため診断が不確かなPD症例は繰り返しの検査が望ましい。10)

 

6) Matsuda H et al. Japanese multicenter database of healthy controls for [123I]FP-CIT SPECT.EJNMMI 45(8):1405–1416, 2018
7) Marshall VL et al: Parkinson's disease is overdiagnosed clinically at baseline in diagnostically uncertain cases:A 3-year European multicenter study with repeat (123I) FP-CIT SPECT. Mov Disord  24: 500-508, 2009
8) K.Marek et al: Longitudinal follow-up of SWEDD subjects in the PRECEPT Study. Neurology 82;1791-1797, 2014
9) E.Tolosa et al: Accuracy of DaTSCAN(123I-Ioflupane) SPECT in diagnosis of patients with clinically uncertain parkinsonism: 2-year follow-up of an open-label study. Mov Disord 22:2346-2351, 2007
10) イオフルパン診療ガイドライン第1版(2014年1月31日 : 日本核医学会, 日本脳神経核医学研究会編) : 5