違いのわかるSPECT診断シリーズ 8 ADと非ADの鑑別 編

FTD
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等については添付文書を参照ください。
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
3D-SSPによる画像解析は核医学画像解析ソフトウェアmedi+FALCON*を使用する事で実施可能です。
(*認証番号:301ADBZX00045000)
本コンテンツで使用している画像提供元:熊本大学

症例3 FTD注2)
脳萎縮所見に比してSPECTでの前方優位血流低下パターンが明らかなFTD

注2)下図参照

 

患者背景

 

70歳台半ば 右利き女性

 

主  訴  行動がおかしい(家族の主訴)
現 病 歴 X-1年秋頃より口数が減り、外出も少なくなった。同年3月に離れて暮らす姉妹と旅行に行った際、飛行機のゲートで順番を無視して通過しようとする、公衆トイレのドアを閉めずに使用する、会話がもどかしそうで説明がうまくできない様子に気付かれた。徐々に料理の手際が悪くなり、鍋焦がしがみられるようになった。また、元来は几帳面であったが掃除を面倒くさがるようになった。近医を受診したところ、認知症と診断され、ドネペジルを服用するようになった。X年4月に家族が精査加療を希望して当科初診となった。
神経所見  ●明らかな異常所見なし
神経心理所見  ●MMSE:20点  CDR=1
 ●言葉は超皮質性運動失語様(自発話減少、喚語困難)
 ●記憶障害はなし~軽度
 ●構成障害(-)
 ●実行機能障害(+)、強迫的言語応答(+)
精神症状  ●無為・無関心
 ●脱抑制的な行動・言動
 ●常同行動(-)

 

POINT
鑑別ポイント
病歴、臨床症状からFTDが疑われる。

 

MRI画像
臨床症状と形態画像との不一致
MRIでは、前頭葉に顕著な萎縮がみられる。しかし典型的なFTDといえるほど限局性ではない。

 

やじるし

 

IMP-SPECT_3D-SSP解析画像

機能画像による臨床症状の裏付け
脳血流SPECT/3D-SSP解析により、明らかに前頭葉優位の血流低下が認められた。その後のフォローアップにおいても、後方症状はほとんど現れておらず、FTDである可能性が極めて高い。

 

Fronto-temporal dementia(FTD)の概念
従来ピック病とされていた疾患のうち、側頭葉優位の萎縮を示すものはFTDには含められなかったことから、FTDに意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語(PA)を加えた上位概念として前頭側頭葉変性症(FTLD)が提唱された。
FTDは神経病理学的に、前頭葉変性症型(FLD type)、ピック型(Pick type)、運動ニューロン疾患型(MND type)に分類される。

 

Fronto-temporal dementia(FTD)の概念図