総論 東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座 百瀬 満

読影のポイント

ポイント4

アーチファクトによる心筋集積異常を判断する

1. フォトンの減衰(attenuation)による集積低下画像 *高頻度図7-1

  • 1 通常の仰臥位(supine position)でSPECT撮像した場合、男性の場合は特に下後壁の集積が相対的に低下する。この所見は、後壁(基部)により強く出る傾向があり、横隔膜による減衰が原因である。
  • 2 女性の場合には乳房による減衰が優位であり、前壁に集積の低下が認められる。一般に高齢者ほど前壁の基部より心尖部側に強く出ることが知られている。また、乳房の位置により負荷と安静で減衰する位置が変化することがあるので注意が必要である。
  • 最近では腹臥位(prone position)で追加撮像している施設もあり、その場合には男性の下後壁の減衰は改善するので(図7-2)、どのような条件で撮像しているかを確認する必要がある。

図7-1 男性・女性に特有なattenuationによる集積低下



図7-2 prone撮像による下壁attenuationの改善


2. 隣接する心外高集積(肝臓、胆嚢、消化管)によるアーチファクト *高頻度

  • 1 Tc標識製剤の場合、左室心筋に隣接して肝臓集積が高い場合や、胆嚢集積が心臓の投影データと重なる場合、その程度が強いと隣接する下後壁の集積が偽欠損を生ずることがある。
  • 2 投与から撮像までの時間が短い場合に出現する頻度が高くなるため、この現象が頻発する場合には撮像開始時間を遅らせることを勧める(肝の高集積の場合60分程度待てばほぼ改善する)。
  • 3 下壁の集積低下の原因がアーチファクトによるものか真の欠損かどうかの判定は難しい場合がある。図8のように欠損と肝臓が連結しているように見える場合、アーチファクトの可能性が高い。
  • 4 Tlの場合、肝臓の集積は相対的に低いので問題にならないが、胃や消化管への集積が隣接する下壁や後側壁に影響することがある。やはり隣接する領域でのみ認められ、負荷像で見られるため、安静像と比べて消化管への影響かどうかを判断すべきである。
  • 5 頻度は低いがTc標識製剤でも胆嚢から排出されたRIが腸管に流出するので撮像のタイミングが悪いと高集積となりアーチファクトを生ずることがある。

図8 肝高集積による下後壁のアーチファクト(偽欠損)


3. 体動やupward creepによるアーチファクト *低頻度

  • 1 SPECT撮像中に心臓の位置がずれると、再構成画像に歪みが生じて正しい集積分布が得られない。
  • 2 原因として撮像中の体動や運動負荷後早期に起こるupward creep (負荷直後に撮像すると心臓が下方から上方に移動する現象)などが上げられる。
  • 3 2〜3カ所に偽集積亢進(↑)、その他の領域が偽集積低下(↑)を生じる。また、一見して左室の辺縁が不明瞭となり形状が歪んでいることが多い。
  • 4 このような冠動脈領域に合致しない集積低下分布を認めた場合、撮像中の投影データを確認して、撮像中に心臓の動きがないかどうかを確認する。検査担当技師と相談することを勧める。
  • 5 最近のSPECT装置には、体動等を補正するプログラムがあり、補正することが可能である(図9)。

図9 心臓の撮像中上方移動(upward creep)によるアーチファクトと補正