各論 日本大学病院 循環器内科 松本 直也

症例5

陽性所見とアーチファクトとの鑑別

  • 50歳代の男性。非典型的胸痛を主訴に紹介された。
  • これまで心疾患を指摘されたことはない。
  • 安静時心電図:心室内伝導遅延を認める。
  • 胸痛精査で行われたTc SPECT(短軸像)を示す(図22)。

負荷時

安静時


図22

考えられる診断は?

 本症例は非典型的胸痛を訴えており検査前確率は中等度である。従ってSPECT検査の良い適応となる。
 負荷時像・安静時像共にinferiorに固定性欠損を認めるものの明らかなfill-in像は認めない。この場合、診断は2つ考えられる。ひとつはRCA領域の心筋梗塞症、もうひとつは下壁の吸収減弱現象による正常範囲である。両者の鑑別には2通りあり、ひとつは固定性欠損の部位の局所壁運動をQGSソフトウェアで見るという方法で、局所壁運動が正常であれば心筋梗塞でなく正常と判断する。他方、もしQGSが使えない場合は腹臥位撮像法(prone position イメージング)を活用する方法がある。これは患者を腹臥位としテーブルの下方から撮像する方法で、この体位で撮像すると心臓が横隔膜から遠ざかり、inferiorのアーチファクトが軽減する。図23に示す様にproneposition イメージングでは下壁のアーチファクト(吸収)の軽減ができる。Prone position イメージングの際に気を付けなければいけないのは、時にdistalanteroseptumに偽性欠損が見られることである。これは腹臥位によって心臓が胸骨に近づき胸骨によるattenuationと説明されている。


supine撮像


prone撮像


図23