各論 日本大学病院 循環器内科 松本 直也

症例1

冠危険因子のある患者の
血流欠損像の評価

  • 症例は50歳代の男性。主訴は労作時息切れ。既往歴に33歳から糖尿病、糖尿病性腎症、脂質異常症、喫煙がある。
  • 外来処方薬は利尿薬、スタチン、食後血糖低下薬。
  • 現病歴として当院眼科にて糖尿病性網膜症の手術目的で、他院から紹介入院。
  • 局所麻酔下、約1時間の手術を行う目的で当科術前コンサルトとなった。
  • 術前検査データとして行われた心エコー図検査にて局所壁運動異常はなく、LVEFは57%と正常であった。
  • 心電図を図14に示す。非特異的ST、T変化はあるが眼科手術は低リスク手術であり術前検査としてSPECTは必須ではない(appropriate use criteria:AUCでも非心臓手術のLow-Risk SurgeryにはSPECT検査は不適である)。

図14

  • 眼科手術は無事終了したが、冠危険因子が累積しているため、血管拡張性負荷で安静時Tl、負荷時Tc心筋血流SPECTを施行した(図15)。

図15

負荷心筋画像(図15)をどう読影するか?

 まずLAD領域であるdistalのanteroseptum〜apexにかけて完全再分布を認める。さらにbase〜distalのinferiorにも不完全再分布を伴う。この病変はbaseのinferoseptumも含んでいるためRCA領域の心筋虚血と診断される。加えて負荷後のTIDが見られることから(TIDは1.48>1.35;本症例の使用核種である安静時Tl、負荷時Tc標識製剤を用いた血管拡張性負荷の場合の正常範囲)3枝病変も考慮する必要がある。実際のCAGでは3枝病変でありCABGが施行された。
 またCABG 5年後のSPECTを図16に示す。血流は正常化していて、AUCでもCABGから5年経過している症例には術後評価目的のSPECT検査は正当化されている。


図16