心筋シンチ読影テキスト 各論
呈示症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

症例2 冠動脈の支配領域では説明できない軽度集積低下を認めた症例

70歳代の女性。ラクナ梗塞の既往があるが、冠危険因子は高血圧症のみで、安静時心エコー図では左室心機能は正常。

リスク評価のために運動負荷(エルゴメータ)SPECTを実施した。

負荷心電図はII,III,aVFにupslope型ST低下1.5mmを認め、陽性。

 

図17はSPECT短軸像である。どのように判断するか?

 

運動負荷時 

SPECT短軸像

安静時
  図17

 

負荷時像の左室の輪郭(shape)が円型でないことと、mid~distalのanteroseptumに血流欠損が、すぐ目につく。安静時像の左室はほぼ円型であることと、負荷時像ではbaseのanterolateralやinferoseptumに軽度の集積低下を認めるが同セグメントのdistal側では血流欠損を認めないことに気付く。冠動脈の支配領域では説明できない集積低下である。最も気になるのは負荷時像の左室の輪郭(shape)が円型ではない点である。これは、撮像中の体動によるアーチファクトとしてよく見られるものである。撮像中の体動の有無をsinogramでみると(図18上段)、補正前ではsinogramの連続性が失われているが(上段矢印)、体動補正プログラム(MOCO)で補正すると連続性が保たれアーチファクトは軽減する(図18下段)。実は本症例は図1(P13)と同一症例における最近のスキャンである。

 

sinogramによる体動の検出
図18