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心筋梗塞・心筋症

陳旧性心筋梗塞(OMI)

症例160歳代前半、男性

EAPで心臓カテーテルを行い、LCX#13完全閉塞に対してPCIの既往あり。
今回、心電図検査で無症候性MI(前壁)が疑われた。
糖尿病で通院中。
運動負荷心筋SPECTを施行したところ、LAD領域の梗塞と虚血、下壁に一過性心筋虚血を認めた( 図1 )。
QGSではTID比1.12、一過性LVEFの低下(ー13%)を認め、SSS、SRS、SDS(全心筋の割合%)はそれぞれ42(62%)、12(18%)、30(44%)、CAGでは#7 99%、 #3 100%の2枝病変と診断。
極めて高リスク患者であり、2ヵ月後にLADに対してPCIを施行。

decision making

無症候性OMIでは一般に梗塞関連冠動脈に高度狭窄が残存している。
同部位にviabilityがあるか、心筋虚血がどの程度あるかにより治療方針が異なる。
本例では#3、#7に高度狭窄があったが、梗塞や虚血のほとんどは#7の支配領域であり、同部位のみにPCIを施行。
その後6年間薬物療法のみで生存が確認されている。

図1SPECT像
#6 PCI前

肥大型心筋症(HCM)

症例260歳代前半、男性

40歳代から運動時にふらつきの症状があったが放置。
最近、運動後の眼前暗黒感が出現したために当院紹介受診。
心エコーでは非対称性中隔肥大を認めたが、心機能は正常。有意な左室流出路の圧較差は認めなかった。
Tl/BMIPP 2核種同時心筋シンチグラフィの収集画像( 図2 上)ではBMIPPで前壁中隔基部、後部中隔にBMIPPで軽度の集積低下を認め、Tlでは灌流低下は無いが、中隔と心尖部に集積亢進がある。
CMR( 図2 下)では中隔の心筋肥大とBMIPPとほぼ同じ領域にGd造影剤の遅延像(LGE)を認めた。
MRI上、EDV146mL、EF55%。

decision making

HCMのTl/BMIPP所見の特徴として、Tlの高集積(集積亢進)部位に、BMIPP集積が低下するミスマッチを認める。
また、MRIでは中隔の右室付着部でLGE陽性の頻度が高く、BMIPPの障害部位と一致することが多い。
本例は直ちに薬物療法が開始された。

図2Tl/BMIPP SPECT像およびMRI像
図 2 Tl/BMIPP SPECT像およびMRI像

Tl

Tl

BMIPP

BMIPP

拡張型心筋症(DCM)

症例340歳代前半、男性

心不全症状を機に近医で薬物療法を開始。
心エコーでびまん性の左室壁運動低下、高度左室拡大(左室拡張末期径/左室収縮末期径 83/74mm)を認めた。
不全心の鑑別のため行われたTl/BMIPP 2核種同時心筋シンチグラフィ( 図3 )ではミスマッチはごく僅かで虚血は考えにくくCMRでもLGEを認めず。
CMRではEDV 355mL、ESV 322mL、LVEF 8%で著明な低心機能の所見( 図3 )あり。
CAGでは有意狭窄はなく最終的にDCMと診断。MIBG( 図3 )では遅延像H/M比1.53で高度集積低下を認めた。
β遮断薬治療を開始し、左室機能の改善、MIBGのH/M比も著明に改善した(H/M比2.20)。

decision making

不全心の鑑別診断としてICMが挙げられるが、心サルコイドーシスなどの二次性心筋症の鑑別も必要である。
TlやBMIPP、CMRを用いた局所心筋障害精査の結果、本例はICMは除外されDCMと診断。
β遮断薬が著効し、MIBGでも集積改善を認めた。

図3Tl/BMIPP SPECT像およびMIBG像

Tl

Tl

BMIPP

QGS MIBG deley

QGS

MIBG deley

虚血性心筋症(ICM)

症例470歳代前半、男性

糖尿病や心疾患の既往無し。
62歳より慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で血液透析導入。
導入時は心エコーで左室機能正常。
8年後心不全兆候あり、心エコーで高度の左室収縮不全を認めたため、Tl/BMIPP 2核種同時心筋シンチグラフィを施行。
BMIPPで心尖部および下後壁に高度集積低下を認め、血流代謝乖離を認めた。
QGSでは左室高度リモデリングを認めたため、ICMを疑い、CAGを施行。
LMT90%、 #7 90%、 #1 99%のLMT+2枝病変でBMIPPの異常部位とほぼ一致した。

decision making

虚血性心疾患の既往がなく、胸痛もないが心不全で入院する患者がICMと診断される場合がある。
DCMとの鑑別が必要となるが、ICMでは一般にBMIPPで局所集積低下を認め、Tlとミスマッチを認めることが多い。
しかし、二次性心筋症でも局所の欠損像がみられ鑑別困難な場合があり、MRIのLGEやCAGによる確認が必要である。
本例はその後、CABG(LIMA-LAD、SVG-PL-#4AV-#4PD)を施行された。

図4Tl/BMIPP SPECT像
MIBG deley

QGS

QGS
EDV
205mL
ESV
157mL
EF
23%

Tl

BMIPP

Tl BMIPP

心サルコイドーシス(心サ症)

症例560歳代後半、女性

心電図異常、心機能低下を指摘され精査のため当院受診。
心エコー上、左室拡張末期径 49mm、EF 45%。
心筋生検では間質の線維化や変性の所見を認めるも、心サ症の診断に至らず。
CMRでは心基部?心室中部中隔の心外膜側に帯状の明瞭なLGE、また心尖部には貫壁性のLGEを認め、心サ症に特徴的な所見。
炎症の活動性を調べる目的でFDG PET/CTを行い、左室に不均一であるがびまん性にFDGが集積、特にLGEのみられる領域を中心に高度の集積がみられた。
またサルコイドーシスに特徴的な両側肺門リンパ節への多発集積が認められた。

decision making

心サ症は心機能が高度に低下する前に診断し、治療することが重要である。
CMRのLGE所見は最も診断に役立つツールである。
本例のように心外膜側のLGEは典型的である。
障害部位は前壁中隔基部が多いが他のどの領域にも起こりうる。
FDG PETは活動性炎症の評価、ステロイドの適応決定に有用である。
しかし、生理的集積を最小限に抑えるために、24時間炭水化物制限食などの適切な前処置が不可欠である。

図5FDG PET像およびMRI像

FDG PET(MIP)

MRI Gd enhancement( LGE+↓ )

FDG PET(MIP) MRI Gd enhancement(LGE+ )
 

PET/CT fusion

FDG PET(MIP) PET/CT fusionSUVmax

SUVmax 13.60

心アミロイドーシス

症例670歳代後半、男性

めまい、労作時息切れにより受診し、心エコーでHCMが疑われた。
その後も症状は徐々に増悪し、意識消失発作が出現したため緊急入院。
CMRでは左室に広範なLGE所見(図6 上)、PYPでも全周性の高度集積を認め(図6下)、心アミロイドーシスが強く疑われた。
冠動脈に有意狭窄病変なし。
心筋生検で心アミロイドーシス(反応性AAアミロイドーシス(AA型)→(−)、トランスサイレチン(TTR)→(+))の所見を認めた。
血液検査などから原発性アミロイドーシスは否定され、老人性アミロイドーシスと診断された。

decision making

PYPはTlと2核種で施行し(図6下)、アミロイドーシスでは全周性集積が特徴である。
特に遺伝性(FAP)あるいは老人性アミロイドーシスのTTRタイプで集積する。
他の原発性(AL、AH型)、続発性(AA)では集積しない。
PYPによる同疾患の特異性は高いため陽性に出れば診断は容易である。

図6MRI像およびTl/PYP SPECT像
  T1強調画像 遅延造影像

MRI

FDG PET(MIP) MRI Gd enhancement(LGE+ )

Tl

FDG PET(MIP) PYP(正面像) FDG PET(MIP)

PYP