乳癌の転移・再発診断

乳癌の転移・再発診断 (骨シンチグラフィとの比較)

監修

新倉 直樹 先生
東海大学医学部外科学系 乳腺内分泌外科学 教授

 

骨シンチや他の画像診断を実施しても、追加でFDG-PET/CTを行うことが考慮されるケース
  • 腫瘍マーカーやアルカリフォスファターゼが上昇している症例1)~4)
  • 肝機能検査値が異常な症例4)
  • 限局性の骨痛や腹部症状など転移が疑われる症例1)~4)
  • 局所再発が確定している症例1)~4)
 <参考文献>
1)Eur J Nucl Med Mol Imaging 2004;31 Suppl 1:S118-124.
2)AJR Am J Roentgenol 2004;183(2):479-486.
3)J Nucl Med 2001;42(9):1334-1337.
4)科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン ②疫学・診断編 2015年版
症例 50歳台 女性
*紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

乳癌(HER2 type)患者。腫瘍マーカー高値に加え、腰痛を訴えていたために、骨シンチを撮像するも集積なし。2週間以内にFDG-PET/CTを撮影したところ、肝転移及び多発性骨転移を認めた。
(図1)骨シンチ(図2左)FDG-PET(図2右)FDG-PET/CT(骨転移が溶骨性変化のみであると骨シンチでは骨転移を同定できないことがある。)

図1
肝転移及び多発性骨転移のFDG-PET/CT画像

図2
左骨シンチ、右FDG-PET

薬物治療3カ月後に、骨シンチを撮像したところ、脊椎および骨盤に広範な高集積を認めた(図3)。一方で、FDG-PET/CTでは治療が奏効することでFDGの取り込みが消失している(図4)。
この症例に関しては、治療前に撮影したFDG-PET/CTによって多発性の溶骨転移を確認していたため、治療後のフレア現象であると容易に判断できたが、仮に、治療前にFDG-PET/CT等で溶骨転移を確認されていなければ、さらに確認のための追加検査が施行されると無駄な医療費が増えるだけではなく、患者さんの不安を煽ることにも繋がり兼ねない。このように、骨転移診断を骨シンチのみで実施していると、紛らわしいケースに遭遇することがある。

図3
脊椎および骨盤に広範な高集積を認めた骨シンチ画像

図4
治療が奏効することでFDGの取り込みが消失しているFDG-PET/CT画像

 

*フレア現象(flare phenomenon)
flareは「炎」を意味する。治療により転移巣が治癒していくにもかかわらず、骨シンチグラム上で集積が一過性に増強し、見かけ上増悪しているようにみえる現象。治療に対する反応性のosteoblastic changeによって起こる。時に新たに転移巣が出現したようにみえることもある。タモキシフェンや化学療法を受けている乳癌患者やホルモン療法中の前立腺癌患者にもみられる。

引用元:実用シンチグラムレポートの書き方 1998年10月20日 金原出版株式会社