専門医が語る小線源療法

〜手術と同等の、高い治療効果に期待〜
小線源療法を知る
深貝 隆志 先生(昭和大学医学部泌尿器科准教授)(メディカル朝日 2011年11月号より)

深貝 隆志 先生

さまざまな治療法が確立されている前立腺がん。専門医は、病気の進行度・悪性度・年齢・他の重い合併症の有無などに応じて治療法を提案するが、ここに紹介する「小線源療法」もその一つだ。年間100例近い治療実績を持つ昭和大学病院の深貝隆志先生に、小線源療法の基本的な知識をうかがった。

中・高リスクの前立腺がんにも適応広がる

小線源療法とは文字通り、放射線を出す小さな線源を前立腺内に挿入し、がんを死滅させる治療法です。放射線を出す線源として、ヨウ素125を化学的に結合させた銀製の短線を、チタン製のカプセルに密封したもの(長さ4.5㍉、直径0.8㍉)を使用します。放射線を体外から照射する「外照射」に対して、「内照射(組織内照射)」と呼ばれることもあります。ヨウ素125が出す放射線の半減期(放射線を出す量が半分に減るのに要する日数)は約60日。挿入後、1年もすれば放射線の影響はほとんどなくなることから、永久的に前立腺に埋め込んでおいても害はありません。小線源療法は、手術のように体を切らずに治せる低い侵襲性、および入院期間の短さなどが主なメリットとしてあげられ、そのうえ手術と同等の高い治療効果があることでも注目されています。事実アメリカでは、手術療法(根治的前立腺摘除術)と小線源療法を比較した際、前立腺がんの再発率はさほど変わらないという統計データも報告されています。

一般的には①がんが前立腺内に限局して(とどまって)いて②PSAの値は10ng/ml未満③がんの悪性度を示すグリソンスコアが6以下、という低リスクの前立腺がんが小線源療法の対象となっていますが、最近の傾向として、中・高リスクの前立腺がんに対しても、外照射やホルモン療法を併用しながら、小線源療法を行う施設も増えてきました。

ただ、小線源療法にもデメリットがないわけではありません。治療後、放射線を発することから起こる排尿障害(排尿時の痛み、頻尿)は3〜4カ月ほど続くことも。また万が一、小線源療法後に前立腺がんが再発した場合は、直腸などの組織が放射線によってもろくなっています。このことから、小線源療法後の手術は困難を極めるといわれています。

以上のようなメリット、デメリット、そして患者さんの希望などを総合的に勘案したうえで、小線源療法という選択肢をとることが望ましいと思います。

短い入院期間 その後はPSA値を定期的に測定

小線源療法を選択した患者さんに対しては、治療前にMRIや超音波を用いて前立腺の大きさや体積を測り、どこに線源を配置するかのプランを立てることから始まります。前立腺があまりにも肥大している場合は、事前にホルモン療法を施して前立腺を小さくすることもあります。治療にあたっては、仙骨麻酔を行い、患者さんには砕石位(出産時の姿勢に似ている)をとってもらった上で行います。会陰部から線源を打ち込むためのアプリケータ針を刺し、事前プランに基づいた配置で、線源を前立腺に埋め込んでいきます。使う線源数は患者さんによって異なりますが、おおよそ70本くらいが標準で、上限は放射線量の関係で100本前後となっています。

●治療に用いる機器

治療に要する時間は1時間ほど。治療翌日までは安静が必要ですが、尿道の管を抜いたら起き上がり、歩行も可です。治療前日から入院し、退院までは3泊4日という短い入院期間で済みます。治療費は、3割負担の場合40万円程度の自己負担であるケースが多いのではないでしょうか。

退院後の半年間は月に1回、それから先は2〜3カ月に1回の割合で通院し、PSA値測定などのフォローを行います。前述の排尿障害に対しては、必要に応じて薬を処方します。最低2年間ほどは、PSA値が安定しないケースがほとんどです。また「バウンス現象」といって、治療後数年経過したころにPSA値が上がる(その後下がる)こともあります。周囲に及ぼす放射線の影響はほとんどないといってもよいのですが、念のために、小さな子どもを抱っこしたり、妊婦さんの隣に長時間いることは、小線源治療後2〜3カ月は控えたほうがよいでしょう。

小線源療法は副作用も少なく、体への負担も軽い治療法です。