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FRIENDS Live 2019 ランチョンセミナー2 講演1

座長

横井 宏佳 先生
福岡山王病院 循環器センター長

演者

田中 信大 先生
東京医科大学八王子医療センタ- 循環器内科 教授

講演1 FFR/RIを用いたトータルマネージメント

座長コメント

安定冠動脈疾患におけるPCI算定要件に機能的虚血評価が加わり、心筋SPECTやFFRを使う機会が増えましたが、すべてがプレッシャーワイヤーで解決できるわけではないため、心カテの前の心筋SPECTによる評価も非常に重要だと思える機会が増えたのではないでしょうか?
適正なPCI治療、より良いPCI治療へ繋げていくために、今我々が理解しておくべき適切な心筋SPECTやFFRとは何なのか、お二人の先生にお話しいただきました。

FFRの応用による冠動脈疾患の予後予測指標について

 冠動脈疾患のリスク評価では、病変の広がりだけでなく虚血の評価も重要な指標となる。その一例として、解剖学的な重症度指標であるSYNTAX Scoreに、FFR値を勘案して有意な病変に対してスコア化するFunctional SYNTAX Scoreの活用が注目されており、SYNTAX Scoreに比べてハイリスク患者を予測しやすくなることが期待されている。FAMEスタディの被験者を対象に行われた研究1)では、SYNTAX Scoreによるリスク分類に比べ、Functional SYNTAX Scoreを用いたリスク分類の方が、より高率に死亡・心筋梗塞の1年発生率を予測することができると報告されている。

 

 Functional SYNTAX Scoreは、あくまでも解剖学的に有意な病変だけをスコア化していく評価指標であるが、冠動脈全てに有意な病変がないような場合でもFFRは予後の予測に有用である。Leeらの研究では、3枝のFFRの値を合計した3-vessel FFRが低いほど、その後2年の主要心血管イベントの発症率が高いという結果が報告されている2)

 

実臨床でFFRを冠動脈疾患の予後改善に活かす

 心筋SPECTはCAG前の虚血の存在診断と治療優先部位の判断に、FFRはCAG後にどの部位まで治療するかの判断に有用と考える。FFRを冠動脈疾患症例の治療方針検討の際に活用した自験例について紹介する。

 

 本症例は70歳代の男性患者である。冠動脈造影検査(CAG)を施行したところ、左前下行枝領域(LAD)、左回旋枝領域(LCx)、右冠動脈領域(RCA)に狭窄が認められた。また、心筋SPECT検査では非常に強いLAD領域の虚血を認め、unstableではなかったが、胸痛が増悪していたため、LADを治療した。LAD治療後は、LCxやRCAの治療の必要性についても検討した。FFRではRCAが0.77、LCxが0.64であり、LCxのほうが強い虚血を示した。治療のしやすさという意味では、RCAは非常に低いリスクで治療できる領域であるが、FFRが低いほど可逆性心筋虚血所見の強さと広がりを表すreversibility scoreが高値を示すという報告3)や、心筋SPECTによる壁運動低下との比較によりFFRの重症虚血のカットオフ値は0.64であるとした報告(図1)もあることから、RCAおよびLCxの両方を治療する判断に至った。このように、FFRは値自身が連続的に虚血の強さを表しているため、治療の適応だけでなく治療後の予後を検討する意味でも有用と考えられる。では、FFRで陰性を示す症例の場合の予後はどうであろうか。Leeらによると、冠動脈3枝のFFRがどれも0.8以上で虚血陰性と判断されても、その合算値である3-vessel FFRが2.59よりも下回る場合は、その後の心血管イベントが多いという結果が報告されている2)。また、3枝全てのFFRが0.8以上であっても、0.81から0.87の比較的低いFFR値が2枝以上で認められる症例はイベントを起こしやすいという報告もある4)

 

図1 重症虚血のカットオフ値

 

 実臨床においては、ステント治療を施行しても虚血の改善が困難な症例、あるいは虚血の存在を把握していても血管径等に問題がありステント治療が施行されない症例が存在する。このような症例に対しても治療後Functional SYNTAX Scoreを評価することで予後を予測することが可能である。Choiらの報告5)によると、ステント治療後に3枝共に完全に虚血が消失した群(治療後Functional SYNTAX Score=0)と、残存虚血のある群(治療後Functional SYNTAX Score ≧1)を比較した場合、残存虚血のある群でその後のイベント発症リスクが高いことが明らかとなっている。また、ステント治療後の3-vessel FFRが低いほど、あるいは治療後SYNTAX ScoreやFunctional SYNTAX Scoreが高いほど、心イベント発症リスクが高いことも同報告で示されている。

 

ステント治療後のFFR改善不良を示す要因とは

 ステント治療後にFFRが改善不良を示すような症例について述べる。このような症例はLAD領域に病変を持つ場合であったり、びまん性病変であったりする場合に多い。代表的な例がCKD症例である。CKDが進行してくると、ステント治療後もFFRの値が低い、あるいは0.8に満たない症例の割合が高いことが知られている(図2)。また、ステント治療後のFFRが、クレアチニンとは負の相関を示し、eGFRとは正の相関を示す傾向があることも明らかとなっている6)。したがって、クレアチニン高値やeGFR低値は3-vessel FFRの低値やFunctional SYNTAX Scoreの改善不良を反映し、予後不良因子として考えることもできるだろう。ステント治療前のFFRは様々な要素の影響を受けるが、通常の安定狭心症の場合、側副血行路からの血流供給があるため、ステント治療前のFFRは0.65から0.70程度を下回らないことが多い。しかし、プラークの進行が非常に速い病変、あるいは末梢までびまん性に病変が存在しているような症例では、ステント治療前のFFRが非常に低値を示すことがあり、そのような症例に対してはステント治療後においてもFFRの改善が思わしくない。

 

図2 腎機能障害の程度とpost-FFRの関係

 

 以上を踏まえると、FFRは心筋SPECTで評価できる虚血の範囲には及ばないかもしれないが、治療後の予後を予測できる指標として有用であると考えられる。すなわち、FFRは虚血の判定のみならず、その値自身が虚血量・プラーク量など患者リスクを反映し得る指標であるといえる。様々なモダリティの特徴を活かし総合的に評価することは、虚血性心疾患の予後改善に繋がるだろう。

1) Nam CW, et al. J Am Coll Cardiol. 2011; 58(12): 1211-1218.
2) Lee JM, et al. Eur Heart J. 2018; 39(11): 945-951.
3) Yanagisawa H, et al. Circ J. 2002; 66(12): 1105-1109.
4) Park J, et al. J Am Heart Assoc. 2018; 7(4).
5) Choi KH, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2018; 11(3): 237-245.
6) Sakoda K, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 2016; 88(2): E38-44.