NTC45 シンポジウム 竹花先生

シンポジウム 高齢者・心不全における心臓核医学によるアプローチ①

座長

筒井 裕之 先生
九州大学

坂田 泰史 先生
大阪大学

演者

竹花 一哉 先生
関西医科大学

心筋血流イメージング
高齢者の心不全の特徴

 循環器系疾患は我が国における傷病分類別医科診療医療費の上位を占めており、特に65歳以上の高齢者では全体に占める割合が最も高く25%を占めている1)。なかでも、心疾患を抱える患者数は多く、超高齢社会の到来に伴い今後さらなる増加が見込まれることから、効果的な予防策が求められている。
 高齢者心不全の特徴としては、急性増悪を来しやすいこと、心房細動、慢性腎臓病、貧血、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、うつ等の精神疾患などの併存症を持つことが多いこと、加齢とともに予後が悪化することなどが挙げられる。また、高齢者心不全の原因疾患としては、虚血性心疾患と弁膜症の割合が高齢者に多く、なかでも虚血性心疾患が若年層に比べるとその割合が高い。さらに70歳以上高齢者では、DCM(拡張型心筋症)に駆出率の低下、心筋虚血が加わると死亡リスクが高まることが知られている2)。これらの危険因子を同時に評価できるのが核医学検査の利点であると考える。

1)厚生労働省「平成29年国民医療費の概況」
2)厚生労働省.第4回心臓移植の基準等に関する作業班資料「本邦における心不全疾患の状況」
心不全治療における心筋血流SPECTの役割

 心不全が疑われる場合は、原因疾患の検索が治療方針を決定する上で重要であり、心臓の構造的異常なのか、あるいは機能異常なのかを診断する必要がある。構造的異常については、弁膜症やシャント疾患を含めて心エコー図検査に勝るものはないと思われる。一方、機能的な異常に関しては心エコー図検査のみで決定することは困難な場合が多く、核医学検査が有用である(図1)。

 

心不全が疑われる場合の診断方法

【図1】

 

 原因疾患の検索で実際にSPECTを活用した自験例を紹介する。対象患者は心エコー図検査ではいずれもびまん性の左室収縮低下を認めるいわゆるHFrEF症例であり、心エコー図検査からはDCMと虚血性心筋症(ICM)の鑑別ができなかった2症例である。これらの症例に対し、99mTc標識製剤を用いた安静心筋血流SPECTを施行したところ、perfusion mapを比較するとDCM症例では明らかな集積低下を認めなかったのに対し、ICMの症例では限局的な集積低下を認めた。このように、ICM(虚血性心筋症)とDCMを容易に鑑別できることも核医学検査の利点である。

心筋血流製剤の使用核種による被ばく線量の違い

 心筋血流SPECTでは 201TlClあるいは99mTc標識(tetrofosminまたはMIBI)が心筋血流製剤として用いられる。
 201TlClの主な特徴としては、再分布するため1回の注射で負荷-安静撮像プロトコールが可能であること、注射24時間後または再静注後像は心筋viability(心筋生存性)を示すことなどが挙げられる。ただし、201TlClは99mTc標識製剤に比べ半減期が8倍であるため、単位放射能あたりの被ばく量がおよそ15~18倍となる。このため、被ばくの観点から特に70歳以下では201TlClの利用を避けるのが望ましい。
 一方の99mTc標識製剤は、半減期が201TlClに比べ短く、大量投与が可能であるため、鮮明な血流像を得ることができる。ただし再分布現象はほとんど起こらないため、負荷時と安静時像は個別の投与が必要となる。抽出率は201TlClに比べると低いという問題はあるが、安静時における99mTc標識製剤の集積は心筋のviabilityを示すと考えてよい。実際に、我々が99mTc標識製剤を用いて行った研究においても、血流と心筋viabilityに強い相関関係があることが示されている3)

3)Takehana K, et al. J Nucl Cardiol 2001; 8: 40-48.
心筋血流SPECTを治療に活かす

 HFrEFの症例において、その原因がICMであると考えられた場合、SPECTによりviabilityの有無、残存虚血の有無、リモデリングの有無を確認した後、可逆性心筋虚血の重症度を評価することが望ましい。重症度評価はリスクを層別化して行うことでその後の治療方針の決定に活かしやすい。実際に、心筋虚血の重症度評価が最適な治療方法(血行再建術か薬物治療か)の選択や、予後の予測に有用であることを示す結果もいくつかの論文で報告されている。
 実臨床の場において、心不全患者さんに負荷検査を行うことは制限を受けることが多いが、安静時SPECT検査は比較的可能と考えられ、HFrEF患者さんの原因疾患を鑑別することが期待できる。我々が2008年にまとめた研究報告ではLVEF≦40%の心不全患者に対し安静時のQGSを行ったところ、ischemic群とNon-ischemic群でregional wall motion(局所壁運動)に差は認めなかった。しかし、regional % tracer uptakeで両群を比較してみると差が認められた。本研究では14セグメントモデルでのregional % tracer uptakeの評価で4セグメント以上の血流低下が認められれば、ICMとすることを報告している4)
 最後に、高齢者心不全における心筋血流イメージングに関連する要点を図2にまとめる。特に安静時心筋血流SPECTは、比較的侵襲が少なく簡便であるため、心不全の原因疾患を特定し、治療のステップへ活かすという意味では非常に重要なツールであると考える。

 

Take Home Message

【図2】

 

4)Maeba H, et al. Ann Nucl Med. 2008; 22(4): 309-316.