NTC46_指名講演_神谷先生

指名講演
123I-BMIPP洗い出し率算出に関する技術的アプローチ-TGCVの正確な診断のために-

座長

平野 賢一 先生
大阪大学

演者

神谷 貴史 先生
大阪大学

早期像・後期像の再現性を担保

 側鎖脂肪酸の一種であるBMIPPを用いる123I-BMIPP SPECT(以下、 BMIPP SPECT)は、心筋の脂肪酸代謝を反映し、心筋細胞内のATP濃度、トリグリセリド含有量およびミトコンドリア機能と良好な相関を示す。BMIPP SPECTの施行にあたっては、早期像のみ撮像している施設も多いと推察されるが、TGCVの診断ではBMIPPの洗い出し率(WOR)の低下が診断基準となるため、早期像に加えて後期像の収集が必須となる。

 TGCV診断基準2020には撮像タイミングも示されている。早期像はBMIPP投与後20分から収集を開始する。後期像に関しては若干幅があり、投与後180~210分の間にSPECT収集を始める。当院では投与後200分から後期像収集を開始するプロトコルで検査を実施している。

 BMIPP SPECTは心筋の脂肪酸代謝を反映する検査であるため、前処置として検査当日朝から検査終了までの絶食が必要となる。

 また、WORの精度管理のため、検査時の体位を早期像と後期像で可能な限り同一とする。当院のセットアップについて示す(図1)。心筋が検出器により近づくので、可能であれば両腕を挙上して撮像を行うことが望ましい。ただし20~25分の収集時間中、両腕を挙上した体位を保持するのが困難な患者もいるため、その場合は早期像の収集から腕を下げ、同一姿勢で撮像を行っている。

 

当院のセットアップイメージ図

【図1】腋窩が検出器の端にくるように位置を設定する、腹部を圧迫して横隔膜の上下運動を抑える、体動抑制のため緊張を和らげるコミュニケーションに努める、などの工夫を行っている。

 

 心筋が検出器の中央になるように体位を設定すると、頭部側に検出器が移動することとなり、腕が干渉して心筋を十分に検出器に近接することができない。したがって当院では、腋窩の位置が検出器の端にあたるように検査スタッフに調整を依頼している。これにより、患者への心理的圧迫も弱められるのではないかと考えている。

 また、呼吸により横隔膜が上下することの影響を最小化するため、腹部を可能な範囲で圧迫する工夫も行っている。

 収集に続いて画像再構成においても、心軸の設定、心基部・中隔・心尖部の設定により早期像と後期像の再現性を担保(同一領域を評価)することが重要となる。

プラナー画像ではなくSPECT画像を用いる

 現状はまだプラナー画像からWORを算出している施設が多いと思われる。しかしプラナー画像では、心臓/縦隔比 (H/M)にて早期像と後期像を比較するため、心筋のみならず縦隔の情報も含まれる。またプラナー(平面)画像であるため肝臓など他臓器のWORも混入してしまう。したがってWORの解析にはプラナー画像ではなくSPECT画像が適している。

 実際に当院の症例において、SPECT画像ではTGCV診断基準(WOR 10%未満)を満たすのに対し、プラナー画像のみで算出した場合にはWORが過大評価され、TGCVの診断から除外されてしまうケースがみられた。

 まとめを示す(図2)。虚血時にはWORが増加し偽正常化となる可能性があるため、急性期での評価は避けていただきたい。また、201Tlとの同時収集を行っている医療機関も多いであろうが、崩壊の分岐比から考えても大幅なWORの変動には至らず、大多数で診断が可能と考えられる。ただし、WOR10%近傍のボーダーラインの症例に関しては BMIPP単核種での撮像が望ましい。

 

TGCVの正確な診断のためのSPECT撮像、WOR計算方法の図

【図2】TGCV診断の重要な根拠となるWORを正確に算出するための 技術的アプローチ