NTC45 教育講演Ⅰ 後藤先生

教育講演Ⅰ 保険診療の中で心筋SPECTを再考する②

座長

玉木 長良 先生
京都府立医科大学

中村 正人 先生
東邦大学医療センター大橋病院

演者

後藤 賢治 先生
福山循環器病院

症例から学ぶ 安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)

 2018年度版の本邦ガイドライン、および2019年度版のESC(欧州心臓病学会)ガイドラインを踏まえて安定冠動脈疾患に対する血行再建(血行再建に通ずる診断)について解説する。

非侵襲的検査(心筋SPECT・冠動脈CT)と侵襲的検査(冠動脈造影[Invasive coronary angiography; ICA])のすみわけ

●非侵襲的検査の位置づけ(図1)
 症状が安定していれば、心筋SPECTや冠動脈CTなどの非侵襲的検査が第一選択となる(Class I)。冠動脈CTで有意狭窄を疑う場合は心筋SPECTを組み合わせる(Class I)、あるいは心筋SPECTで診断がつかない場合は冠動脈CTを追加する(Class IIa)。なお、ESC 2019では、感度、特異度の低さから、冠動脈疾患の診断目的での運動負荷心電図はClass IIbとなっている。

 

図1安定冠動脈疾患に対する「非侵襲的検査」

【図1】無症候症例に対して、ルーチンで冠動脈CTを行うことは、ESCガイドライン2019では推奨されていない(推奨クラスIII)。

 

●侵襲的検査の位置づけ(図2)
 安定冠動脈疾患に対するICAのClass Iの適応は限られており、①薬剤抵抗性および軽労作での胸痛でハイリスクと判断された場合、②症状は軽いが、至適薬物療法にもかかわらず非侵襲的検査でハイリスクと判断された場合である。プレッシャーワイヤーはICAを補完するという意味では重要視されているが、そもそもICAの敷居が非常に高く設定されていることに注意したい。

 

図2安定冠動脈疾患に対する「侵襲的検査」

【図2】無症候~中等度の症状の場合には、心筋SPECTなどの非侵襲的検査でハイリスクであれば、侵襲的なICAがクラスIでの推奨となる。

 

「虚血」の診断~心筋SPECTとプレッシャーワイヤーのすみわけ~

 ESC2019では無症候の冠動脈疾患のスクリーニング法についても述べられている。その中で、ハイリスク(糖尿病・濃厚な家族歴・40歳以上)症例における心筋SPECTや冠動脈CTでの評価はクラスIIbの推奨となっている。

 

■症例 非心臓疾患(鼠径ヘルニア)の術前精査目的で当院紹介
 糖尿病を基礎疾患に持つ70歳台男性。心電図と心エコーから後壁陳旧性心筋梗塞が疑われ、心筋SPECTで回旋枝領域に固定性欠損と周辺部のFill-inを認めた。ハイリスクのため引き続いて実施したICAで3枝病変が疑われた(回旋枝(#13)の慢性完全閉塞・左前下行枝(LAD)と右冠動脈(RCA)の中等度狭窄)。プレッシャーワイヤーにより中等度狭窄をFFRで評価したところ、LAD: 0.86、RCA: 0.87でDefer可能であった。非心臓手術終了後にDAPT(抗血小板剤二剤併用療法)を導入し、回旋枝の慢性完全閉塞に対するPCIを施行した。このように非侵襲的検査で予想された部位以外(今回のケースであれば回旋枝以外)に中等度病変があり、多枝疾患を疑う場合がある。このような場合、プレッシャーワイヤーで虚血評価を追加する必要がある。なお、ESC/EACTS(欧州心臓胸部外科手術協会)ガイドライン2018年版では、中等度狭窄(40-90%狭窄)に対するプレッシャーワイヤーが標準的評価法と記載されている(Class IA)。しかし、重要なことは、その解説として「①非侵襲的検査で虚血が証明されない場合、②多枝疾患の場合」という但し書きがあり、やはりここでも非侵襲的検査の重要性が強調されている。
 実臨床を考えた際、ハイリスク症例であれば、直接ICAを行い必要に応じてプレッシャーワイヤー評価を追加することに異論はないと思う。低~中等度リスク症例の場合、非侵襲的検査でハイリスクであればICAを行う。その際、心筋SPECTとの矛盾(「多枝」病変と「他枝」病変)があれば、”Balanced ischemia”も念頭に置いてプレッシャーワイヤーで評価をする。重要なことは、ICA前に心筋SPECTから虚血領域を予想しておくことであり、それに矛盾するようなことがあれば躊躇なくプレッシャーワイヤー評価を追加するべきである。

総括

 安定冠動脈疾患のストラテジー決定に必須なものは、「症状」、「心機能」、「部位診断」、「虚血」である。ISCHEMIA trialの結果も併せての当院での虚血診断方法だが、症状から安定冠動脈疾患を疑い(不安定を除き)、非侵襲的治療として、①心エコーで低心機能を除外、②心筋SPECTで虚血の重症度判定、③冠動脈CTで左主幹部病変除外を含めた部位診断を行う。ハイリスクでない限り、ICAを行う必然性がないと考えると、虚血の診断モダリティである心筋SPECTの需要は今後高まるのかもしれない。