NTC45 教育講演Ⅱ 小梁川先生

教育講演Ⅱ 臨床医に伝わるレポーティングの書き方②

座長

工藤 崇 先生
長崎大学

演者

小梁川 和宏 先生
北海道大学(現 苫小牧市立病院)

臨床に活かすレポーティング 〜ノウハウの伝授〜
当院で取り組んでいるレポート作成時の工夫

 臨床現場では、核医学検査の結果をレポーティングした内容が依頼医にうまく伝わらないことがある。その主な要因としては、「読影の経験もなく、指導者もいない」、「画像が鮮明ではなく読影しにくい」、「所見内容をどこまで記載していいのかわからない」などが考えられる。そこで本講演では、これらの解決に繋がるレポート作成時の留意点について述べる。図1は実際に当院で作成したレポートのイメージである。

 

北海道大学病院でのレポート

【図1】レポートには検査所見だけでなく、所見の解釈や今後の方針も記載しており、依頼医が臨床に活かしやすい内容を意識して作成している。

 

当院では「依頼者の求めている内容を最初に記載する。」、「誰が見ても理解できるように、所見だけではなく解釈も記載する。」、「依頼者が専門ではない場合もあり、今後の方針に必要な検査の提案も行なう。」という点をレポート作成時に心掛けている。
 次に、実際の症例に対する当院の取り組みと、レポートの記載例を紹介する。

 

 

【症例①】

70歳代 男性

現病歴 :
人間ドックのCTにて腹部大動脈瘤を指摘され、手術目的に当院へ紹介となった。精査の結果、手術適応となり術前の虚血評価目的に負荷心筋血流SPECTを施行した。自覚症状なし。

身長 : 167cm、体重 : 57kg、BMI : 20kg/㎡

既往歴 : 脂質異常症  喫煙歴 : なし

家族歴 : 母-大動脈瘤破裂、父-脳梗塞、姉-脳梗塞、心筋梗塞、兄-心筋梗塞 CABG後

 

 SPECT検査の結果、負荷像で前壁~前壁中隔に軽度心筋血流低下を認め、安静像で一部改善を認めた。また、 SPECT画像からは視覚的にTID(一過性虚血性内腔拡大)も認められた。一方で、Gated SPECTの結果からは安静時と負荷時で心内腔容積の差に異常は認められなかった。 LVEFについては正常範囲内であった。これらの結果から、レポートには「LAD領域に虚血を疑う所見を認め、TIDも認めることから多枝病変が疑われます。冠動脈造影での精査をお勧め致します。」という記載が加えられると望ましい。本症例はその後、術前の冠動脈造影により3枝病変が認められ、CABGを施行する方針となった。

 

【症例②】

70歳代 女性

現病歴 :
当院整形外科にて左大腿骨頸部骨折に対する手術予定であった。術前の心エコーにて左室下壁〜後壁にかけての局所壁運動障害を認めた。術前精査目的に冠動脈造影を施行。自覚症状なし。

身長 : 149cm、体重 : 40kg、BMI : 18kg/㎡

既往歴 : 高血圧、IgA腎症、慢性腎不全(血液透析中)

喫煙歴 : なし

 

 冠動脈造影の結果では、右冠動脈の入口部に99%の高度狭窄を認めた。整形外科医と協議の上、術前にPCIを行う方針となり、ベアメタルステントで治療を行ったところ、血流の改善を認めた。しかし、PCIの合併症により上行大動脈に解離腔が出現。厳格な降圧管理と抗血小板剤の中止により解離腔の拡大は見られなくなったが、冠動脈CTを施行したところ、RCAステント内に低吸収領域を認め、血栓またはアーチファクトが疑われた。そこで、99mTc薬剤負荷心筋血流SPECT/CTで評価したところ、下壁に集積の低下を認めた(図2)。しかし、CTの吸収補正を行うと、下壁の血流低下が改善したため(図3)、アーチファクトであると判断した。これらの結果から、レポートには「RCA領域の血流低下は横隔膜アーチファクトによるものであり正常心筋血流です。」という記載が加えられると望ましい。

 

症例2 Tc-99m薬剤負荷心筋血流SPECT/CT CT吸収補正前 短軸像

【図2】CTの吸収補正前の結果では、下壁の集積が低下している。

 

症例2 Tc-99m薬剤負荷心筋血流SPECT/CT CT吸収補正後 短軸像

【図3】CTの吸収補正を行うと、下壁の集積低下が改善している。

 

 

【症例③】

70歳代 男性

現病歴 :
軽労作での呼吸困難感の訴えあり近医を受診。単純CT (心電図非同期)にて胸水貯留、心拡大、冠動脈石灰化を認めた。冠危険因子を多数有しており、うっ血性心不全の精査加療目的に紹介入院。

身長 : 164cm、体重 : 76kg、BMI : 28kg/㎡

既往歴 : 心房細動、高血圧、糖尿病、慢性腎不全

喫煙歴 : 2-3本/日×53年

 

 冠動脈造影を施行したところ、RCAに関しては低形成を示す所見であった。LADに関しては、#6と#7で75%の狭窄を認め、対角枝には90%の狭窄を認めた。LCxに関しては#14と#15で75%の狭窄を認めた。そこで、虚血の評価を行うため、 99mTc薬剤負荷心筋血流SPECT/CTを施行した。CTの吸収補正後の結果では、心尖部に軽度集積低下が認められ(図4)、LAD末梢領域の虚血を疑う所見であった。しかし、CTの吸収補正前の結果では、同部位の集積低下は認められなかった(図5)。CTの吸収補正後には生理的なApical thinningが出やすいことから、心尖部領域の集積低下はアーチファクトによるものと判断した。これらの結果から、レポートには「負荷時の心尖部の軽度血流低下は吸収補正後のアーチファクトであり、LAD末梢領域の虚血は認めない。」という記載が加えられると望ましい。

 

症例2 Tc-99m薬剤負荷心筋血流SPECT/CT CT吸収補正後 垂直長軸像

【図4】CTの吸収補正後の結果では、心尖部領域に集積低下が認められる。

 

症例2 Tc-99m薬剤負荷心筋血流SPECT/CT CT吸収補正前 垂直長軸像

【図5】CTの吸収補正前の結果ではCTの吸収補正後の結果と比較し、心尖部領域の集積低下が認められない。

 

ガイドラインにおける心筋血流SPECTの位置付けと今後の展望

 近年、慢性冠動脈疾患に対する心筋血流SPECTの有用性が国内外のガイドラインで評価されている。
 慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年度版)では心筋血流イメージングの推奨とエビデンスレベルとして「既知冠動脈疾患の残存虚血の存在と部位診断を行う場合:推奨クラスⅠ、エビデンスレベルB」、「中等度(40~75%)狭窄病変の機能的狭窄度評価を行う場合:推奨クラスⅡa、エビデンスレベルB」、「検査前確率が中等度以上だが運動負荷ができないため,薬物負荷検査を行う場合:推奨クラスⅡa 、エビデンスレベルC」と高く推奨されていることがうかがえる。
 また、安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)では血行再建のための非侵襲的虚血評価法の推奨とエビデンスレベルとして、冠動脈疾患罹患の中等度リスクを有する症例に対する非侵襲的検査(SPECT、負荷心エコー法、PET、パーフュージョン MRI)を用いた虚血の存在、虚血域の範囲の評価が、推奨クラスⅠ、エビデンスレベルAとなっている。
 一方海外では、慢性冠動脈疾患の疾患とマネジメントについてまとめられた2019 ESC(European Society of Cardiology)ガイドラインに血行再建のフローチャートが紹介されている。その中で、非侵襲的なイメージモダリティーによる評価が、最終的な血行再建の是非に大きく関わっている。
 以上のことから、慢性冠動脈疾患に対し心筋血流SPECTが有用なモダリティであることがうかがえる。今後のレポーティングの展望としては、現在のガイドラインに基づいて治療方針の決定までサポートしていければ望ましい。