NTC45 テーマディスカッション

テーマディスカッション 冠動脈疾患の治療前後における虚血評価(シンチ・FFRCT・resting index/FFR)③

座長

汲田 伸一郎 先生
日本医科大学

横井 宏佳 先生
福岡山王病院

演者

山田 愼一郎 先生
北播磨総合医療センター

川﨑 友裕 先生
新古賀病院

コメンテーター

新家 俊郎 先生
昭和大学

依田 俊一 先生
日本大学

近江 晃樹 先生
日本海総合病院

ディスカッション

 冠動脈疾患の治療戦略においては、治療前後、フォローアップ時の各時期に、機能的虚血の状態を評価しながら患者の状態と予後を踏まえた治療を検討することが極めて重要である。
 心筋血流SPECT、FFRCT、侵襲的FFRなど数ある虚血評価モダリティをどのように選択し、活用していくべきなのか、臨床経験豊かなお二方の先生にご講演いただき、臨床・研究の第一線でご活躍されているコメンテーターの先生方とともにディスカッションしていただいた。

治療前における機能的虚血評価
■FFRCTの評価

汲田 新家先生はFFRCTを研究目的も含め数多く活用されています。FFRCTの有用性についてどのように評価していらっしゃいますか。

 

新家 山田先生のご発表と同じく、FFRよりもカットオフ値が低めに出る印象があります。冠動脈CTベースのスクリーニングデバイスであり、negativeの判断における信頼性は高いと捉えています。今後、日常臨床で活用される際に、そのゲートキーパーとしての役割が果たせるかが問われている段階と考えています。

 

汲田 Negative predictive valueが高いということですね。

山田 deferした際の良好な予後に関する日本人データをADVANCE Registryで様々に報告していただいています。今後、伸びていく検査であろうと捉えています。

 

新家 CTの利点は、山田先生も強調されていたように、血管の還流領域が推察できること、また動脈硬化進展がある程度推定できることだと捉えています。そのような患者であればより強力にメディカルセラピーを行う動機付けにもなります。 FFRCTなどの新しい技術を今後どのように活用し、組み合わせていくのか。我々もディスカッションを重ねる必要があると思います。

 

■診療報酬上の課題

新家 FFRCTを施行すると、1カ月以内の他の虚血評価モダリティの保険適用が難しい課題があります。重症例で各種の検査が組み合わせれない懸念があるため、現状ではスクリーニングとしての役割を主に施行するデバイスとするのが適切と捉えています。

 

汲田 他の機能性虚血評価とどのように組み合わせていくことが適切でしょうか。

依田 心筋血流SPECTとFFRCTの両方をみる必要を感じる症例をしばしば経験します。この場合のコスト請求は月を跨いで行うなども試みています。

 

■形態学的検査と虚血評価の選択

横井 ISCHEMIA試験では被験者登録の際に冠動脈CTによりLeft mainを除外していました。初期段階で重篤なものを判別するため解剖学的な所見を得る重要性は高いと感じています。形態学的評価と虚血評価をどう組み合わせるのが良いか、コメントを頂けたらと思います。

山田 形態学的評価によるスクリーニングの役割は非常に重要と捉えています。ですが、どういったケースでも形態学的な検査をファーストにすべき、というものではないと思います。 ISCHEMIA 試験においても、CT検査の前に冠動脈疾患の状態を精査する問診のステップが設けられていました。何らかのゲートキーパーがあった上で、そこでの評価を受けて各種のモダリティを選択していく、というのが正しい方向と捉えています。

近江 心不全パンデミックの背景もあるなか、心不全の治療戦略を検討する上で、虚血性心筋症の鑑別として冠動脈CT検査を行うことが多くなっています。その際に高齢で合併症を抱えた患者も多く、石灰化病変により狭窄の状態が明確判断できないケースも多い。こうした症例は今後も増え続けると考えられ、治療法の選択と評価に必要な心筋血流SPECTを施行する機会も増えるだろうと感じています。

治療後における残存虚血評価
■PCI術直後の虚血評価

近江 diffuseな病変などではステントを留置しても治療早期にはFFRの改善が十分に期待できないケースをしばしば経験します。 FFR0.92または改善幅0.24をエンドポイントとしてイメージしたときに、この目標が達成されなかったときは、さらに施術を重ねるべきなのか、お考えをお聞かせください。

川﨑 エンドポイント判断においては、術後にFFR pullback curveを作成し、残存する有意なFFRのステップアップの有無を確認することが重要と考えています。例えば、び漫性病変で末梢に圧較差があることが分かっていれば、局所的な治療では改善が望めないことが予測できます。そういったケースでは、FFR値の改善を追求しすぎて追加のDES留置を行うのでは無くOMTを適用し、末梢の状態を改善させる方向で検討すべきではないかと考えています。

近江 FFRCTによる数値でOMTによる病変性状の改善をフォローすることは可能でしょうか。

川﨑 適切なOMTであったかどうかまでは検証できていませんが、 2年後で2回目のFFRCTを実施できたケースは、少なくとも数値上の進行は認められませんでした。不安定プラークがあってもその時点では虚血を認めないようなケースでは、OMTによるFFRCTの数値の変化(改善)も追うことができるかもしれません。

 

■FFRCTのバーチャル評価機能

横井 FFRCTにはバーチャル・ステンティングにより、インターベンションによる改善度を予測する機能も検討されています。術直後の評価における有用性をいかがお考えでしょうか。

新家 術直後の評価はdiffuse病変とdiscrete病変では、術後の改善や予後の予測が全く異なります。そのため、invasiveなFFRのpullback curveを確認することが大切です。術前の病変性状の違いによる影響も大きく、多様な因子を加味する必要があるため、現状のFFRCTの機能で我々が本当に知りたいボーダーラインのケースをしっかり予測できるかというと、まだまだチャレンジングではないかと思います。

 

■慢性期の虚血評価とフォローアップ

横井 PCI直後の虚血評価は心筋血流SPECTでは難しい、という理解でよろしいでしょうか。

依田 PCI直後の心筋血流SPECTでは、血行再建後の心筋の修復過程を評価することになり、PCI治療の結果を反映した虚血評価は難しいと考えています。心筋血流SPECTは慢性期の虚血評価と捉え、当院では術後8カ月程度の時期に実施しています。

横井 術後の慢性期の虚血評価とフォローアップはどのように実施されていますでしょうか。

新家 術後は地域の開業医に患者さんをお返しし、1年後程度を目途に来院いただき、心筋血流SPECTでフォローアップすることが多くなっています。PCI後のフォローアップ冠動脈造影は、ガイドラインで「ルーチンでの実施を奨励しない」とされていますが、ハイリスクのACSの患者のような残存病変もあるケースでは、フォローアップの冠動脈造影を提案するようにしています。

近江 PCIが終わった時点で、その場にいるカテチームで施術の複雑さや治療後の状態、残存狭窄を再確認し、フォローアップの時期とモダリティの方針を決めたうえで家人にレクチャーし退院してもらう形をとっています。そのなかで心筋血流SPECTによるフォローアップが徐々に増えている印象です。

川﨑 やはり冠動脈再建術に携わる立場としては、術後の形態的な変化を見たいため、可能であれば冠動脈CTと心筋血流SPECTの両方を施行したいというのが本音です。その中でも心筋血流SPECTは治療戦略の検討に必要であり、徐々に増えています。

横井 「PCI+OMTのセットで治療していかなくてはならない」というのがISCHEMIA試験の1つのメッセージです。その戦略を考える上において、治療前後、また長期のフォローにおいても、虚血評価が極めて重要であり、どのモダリティを使い、どのタイミングに行うのかを考えていく必要があると思います。医療費の財源が厳しくなるなか、医療経済的な側面も含めて議論を続けていくことが必要だろうと感じています。
本日はありがとうございました。