NTC45 テーマディスカッション 川崎先生

テーマディスカッション 冠動脈疾患の治療前後における虚血評価(シンチ・FFRCT・resting index/FFR) ②

座長

汲田 伸一郎 先生
日本医科大学

横井 宏佳 先生
福岡山王病院

演者

川﨑 友裕 先生
新古賀病院

治療後における残存虚血評価

 治療前の機能的虚血評価の重要性については、様々な報告がなされ、診療報酬のPCI算定要件にも加えられたことで関心が高まっている。一方で、治療後の残存虚血評価についての報告は限られている。治療後の残存虚血評価について、PCI直後の急性期と術後の慢性期評価の時期に分け、それぞれの時期に合った特性を持つ、FFRと心筋血流SPECTの2つの検査を検討する。

急性期の評価 FFRによる評価

 PCI後の残存虚血評価においては、治療のエンドポイントの判断と、その後のイベント予測、予後評価が重要である(図1)。 PCI直後に負荷心筋血流SPECTを実施することは難しく、FFRを用いたエビデンスの報告が積み重ねられている。

 

FFRによるPCI後の機能的評価

【図1】

 

■FFRガイドの予後指標
 ベアメタル時代の研究であるが、FFRガイドでPCIを適用した患者の経過を追ったNico Pijls先生らの報告1)では、術後FFR 0.91以上を達成すると6カ月目の有害事象発生が6%以内に収まる一方で、0.81未満では有害事象発生が30%に上ることが示された。さらに、この0.91以上を達成した割合は68%にとどまり、3割強の治療はステント留置にもかかわらず、良好な予後が実現できていない課題が示されていた。

 

■PCI後FFRのカットオフ値(DESデータ)
 FAME1とFAME2に登録患者のデータの解析2)では、PCI後のFFRの数値を3群(0.88未満、0.88~0.92、0.92超)に分けて分析したところ、治療した血管から由来するイベント発生(VOCE:vessel-oriented clinical events、責任血管での心血管死、非周術期MI、再血行再建術)において、「0.92超」群と「0.88未満」群に有意差が認められた。術後FFR 0.92をイベント予測に妥当なカットオフとしているが、達成は33%にとどまっていた。
 また、中国のDKCRUSHレジストリーの登録データの解析3)では、PCI後の冠動脈疾患全体でのイベント発生のカットオフ値はFFR 0.88、LADに関してはFFR 0.91とされている。

 

■ステント留置後のFFR値の影響因子
 PCI後のFFRに影響する因子としては、ステントの拡張不全とステント外の残存プラークの存在が挙げられる。例えば石灰化病変があると、ステントの拡張が十分にできず、石灰化病変部位に圧較差が残る。また後者のステント外のプラークの存在は、病変が局所的ではなく、びまん性に存在する場合に典型的である。最狭窄部にステントを置いて十分な拡張がなされたとしても、残存のびまん性病変やプラークにより圧較差が生じ、術後のFFRが改善しない結果となる。
 術後FFRの改善に及ぼす因子は、Kimuraらが2016年にLAD病変であることを指摘している4)。改善が得られないメカニズムはLADの広い還流領域に対し留置するステントの長さや配置のミスマッチが改善に悪影響を及ぼすと指摘している。
 また、Tanakaらが2017年に術後のIVUS評価により、術後FFR値に影響する因子を検討している5)。改善に悪影響を与える因子としては、ステントの不十分な拡張とともに、ステントのエッジの問題を指摘している。例えばエッジ部分の解離の残存や、ステントがプラークを十分にカバーしていない、ステントがカバーしていない末梢血管の残存病変を挙げている。

 

■術後FFRの改善幅による予後への影響
 予後の評価指標として術後FFR値とともに注目されているのが、治療によるFFRの改善幅、いわゆるΔFFRである。2019年のJAMA Cardiologyの報告6)では、FAME1、FAME2の患者を対象にした分析で、FFR改善幅0.18以下をLow、0.19~0.3をMiddle、0.3以上をHighと3群に分けて検討している。VOCE(責任血管での心臓死、MI、再血行再建術)の発生率はHigh群とLow群で有意な差が確認され、ΔFFRのカットオフは0.24とされた。さらに術後のFFRが0.92に達せず、Δ0.24も未達成である群のVOCEが多いことも示されていた。
 また、ステントに第2世代DESを使用したFAME2だけのデータ解析では、ΔFFRは術後のイベント発生に関する唯一の予測因子であり、有用である、ことが示されていた。
 FFRの改善が実現できない背景としては、びまん性病変の存在、最適化されていないステント治療とともに、微小循環障害などが指摘されている。びまん性病変をDESでフルカバーする治療方針も増えてきているが、それだけではFFRは改善できないことが、こうした背景因子からは読み取れる。

1)Pijls NHJ, et al. Circulation. 2002; 105: 2950-2954.
2)Piroth, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2017; 10: e005233.
3)Li SJ, et al. J Am Coll Cardiol Intv. 2017; 10: 986‒995.
4)Kimura Y, et al. Cardiovasc Interv Ther. 2016; 31: 29-37.
5)Tanaka N, et al. J Cardiol. 2017; 69; 613-618.
6)Fournier S, et al. JAMA Cardiol. 2019; 4(4): 370-374.
慢性期の評価 負荷心筋血流SPECTによる評価

 治療後の慢性期の残存虚血評価においては負荷心筋血流SPECTの有用性が知られている。PCI後の慢性期の負荷心筋血流SPECTによる虚血評価の利点は、高い特異度による残存虚血や新規の虚血の評価が出来る点、PCI後の残存虚血量による予後評価ができる点、虚血の改善度(5%以上)による予後評価ができる点、などが挙げられる。またPCI後の心機能評価により治療の効果判定にも役立てることができる。

 

■治療介入後の心筋虚血量変化による治療効果判断
 COURAGE TrialはPCI群とOMT群の予後のイベント発生率に有意差を確認できなかった試験結果だが、サブ解析の報告では、PCI群では術後に心筋虚血量が3%近く減少したのに対し、 OMT群では0.5%しか減少できていない実態も示されている7)。つまり、適応のある患者を選択してPCIを施行すれば、虚血の程度は改善することが示されている。5%の虚血改善が得られた患者割合も、OMT群の19%に対して、PCI群は33%以上が改善していた。

 

■残存虚血量によるイベント・予後予測
 PCI後に残存する虚血量で予後のイベント予測ができることも示されている。術後に「10%以上虚血が残存する患者」、「ほとんど虚血が残らなかった患者」、「その中間であった患者」、の3群で比較すると、「10%以上の虚血が残存」群の予後が5年間のフォローアップ期間中悪化し続けていた。

 

■治療介入による虚血改善幅による予後評価
 さらに「5%以上の虚血が改善」群と、その他の2群の比較では、虚血の改善幅が大きい群でイベント発生が少ないことが示されていた。その傾向は、術前の虚血が中等度以上においては顕著であり、PCI適用時には、「きちんと虚血の評価をして適応のある人を見定める」ことの重要性が示されている。この結果は本邦のJ-ACCESS 4においても認められている8)
 さらにJ-ACCESS 4では、「PCIにより5%以上の改善が得られた患者」群と「術前の心筋虚血が5%未満で経過観察になった患者」群の予後は大きく変わらず、「PCI後も5%未満の虚血の改善にとどまった患者」群のイベント発生率が高くなっていた。このように治療介入による虚血量の改善幅が、慢性期の予後の評価、層別化に役立つ可能性が日本のデータにおいても示されている。

 

PCI後の負荷心筋血流シンチによる虚血評価の利点

【図2】

 

7)Shaw LJ, et al. Circulation 2008; 117: 1283-1291.
8)Nanasato M, et al. Int J Cardiol. 2018; 267: 202‒207.
まとめ

 治療後の機能的虚血評価においては図3に示したように時期に応じモダリティの適正を踏まえた適用が大切である。 PCI後の急性期に関しては術前評価に使用したプレッシャーワイヤーを活用し、FFRを測ることでエンドポイントの判断とイベントの予後予測にも役立てられる。カットオフとしては論文により幅があるが、FFR 0.88~0.92が目安となる。また、Δ FFRも重要な指標であり、0.24以上確保できれば良好な予後が予測できる。

 

冠動脈疾患が疑われたら

【図3】

 

慢性期の機能的虚血評価においては、負荷心筋血流シンチによる評価が有用である。治療介入による虚血の減少割合、また残存虚血の有無と量によりイベントの予測、予後評価が可能である。
 こうした背景を踏まえた、当院の冠動脈疾患の検査のフローを紹介する(図4)。術前評価においては、まず冠動脈CTを適用し、冠動脈の形態学的な確認している(研究利用可能であった際には、冠動脈FFRCTも活用していた)。冠動脈CTは感度が高く、陰性的中率が高い特徴があるため、スクリーニングツールとして有用である。

 

冠動脈疾患治療後の機能的虚血評価まとめ

【図4】

 

 次に虚血評価のための負荷心筋血流SPECTも施行し、陰性の場合も冠動脈疾患を否定できない場合は侵襲的なFFRを実施する手順を採っている。
 PCI後の慢性期の評価は新たに虚血が生じていないかを確認する目的で負荷心筋血流SPECTを採用することが多くなっている。冠動脈CTよりも特異度、陽性的中率が高く、フォローアップ時の新規病変の確認には適切と捉えている。