NTC45 海外情報報告 真鍋先生

海外情報報告 海外の心臓核医学に関する最新の知見

座長

倉林 正彦 先生
群馬大学

演者

真鍋 治 先生
北海道大学病院(現 東京医科歯科大学)

海外の心臓核医学に関する最新の知見
PET装置による心筋血流定量の意義と課題

 2018年の1年間、米国のCedars-Sinai Medical Centerにて、循環器画像を用いた臨床や研究の機会を得た。海外、特に米国心臓核医学界で注目されているトピックについて報告する。
 心疾患を評価する上で微小循環障害の評価が重要であることはよく知られている。心筋への血流は心筋外を走行する導管血管と、心筋内を走行する微小循環に分けることができ、それぞれの影響から心疾患の3つの病態を想定できる(図1)。

 

考えられる病態

【図1】「導管血管に狭窄があるが微小循環は障害されていない場合」「導管血管と微小循環の双方に障害がある場合」「導管血管は正常だが、微小循環が障害されている場合」の3病態が想定される。

 

 そのため、冠血管造影上は正常でも、微小循環が障害されて心疾患症状を呈する場合がある。しかし、核医学検査による定性的評価は心筋血流トレーサーの集積を相対的に表す画像を基にするため、多枝病変やびまん性の微小循環障害を正常と評価するケースがあることが課題であった。この点について、近年、PET装置によるトレーサー分布のダイナミックデータを基に心筋血流量を定量することで、多枝病変や微小循環障害の評価が可能であると報告されている1)
 心筋血流定量によって導き出される負荷時と安静時の「心筋血流量比=冠血流予備能」は、冠動脈の狭窄だけではなく、微小循環障害を示す様々な病態で低下する。糖尿病、慢性腎不全などによる微小循環障害を反映することが示され、心臓のイベントや予後予測に有用であることが検証されてきている2)。さらに近年立て続けに、心臓移植患者においても、冠血流予備能が低いことが死亡の独立予後因子となることも報告されている3)
 また、冠血流予備能が治療方針決定にも役立つことが示されている。米国の高リスク冠動脈疾患患者を対象にしたレトロスペクティブな研究では、冠血流予備能1.6未満の高度低下例に関しては、CABGを適応したほうが、PCI適用群、血管再建術非適用群よりも心血管イベント発生率が有意に低くなっていた(図2)。

 

冠血流予備能による治療法の選択

【図2】冠血流予備能1.6未満の高度低下例に関しては、 CABG適用群の心血管イベント発生率が、PCI適用群、血管再建術非適用群よりも有意に低かった。

 

 このように様々な有用性が見込まれている冠血流予備能であるが、心筋血流量のダイナミックカーブを得る際の技術的な問題点が指摘されている。PETはCT、MRIなどと比べて撮像時間が長く、呼吸性変動や心拍動などの影響を受けやすい。Memmottらの報告では、負荷時には30%程度の患者で心筋の厚さ以上の動きがあり、それが定量に影響することが示された1)。正確な心筋血流量の定量には、このmotion correctionへの対応が必須であると指摘されており4)、今後のソフトウェアの改善に期待している。

1)Aikawa T et al. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2020; 21(1): 36-46.
2)Murthy VL et al. Circulation. 2011; 124(20): 2215-2224.
3)Miller RJH et al. J Nucl Med. 2020; 61(2): 249-255.
4)Memmott MJ et al. J Nucl Cardiol. 2018; 25(4): 1286-1295.
SPECT装置の応用と血流定量の可能性

 続いて、SPECT装置を用いた心臓核医学検査のトピックを紹介する。従来のガンマー型SPECT装置に比べて高感度、高分解能を実現した半導体SPECT装置の応用研究も進められている。
 前向き研究である「WATERDAY Study」では、15O-水PETとテクネシウム製剤を用いた半導体SPECTによる定量値が良い相関を示し、FFRの結果ともある程度一致したことから、心筋血流定量の可能性が示唆されている5) 。テクネシウム製剤の血流追従性の課題より生じるダイナミックデータ収集精度と補正の在り方、また従来機よりも向上したもののPET装置に比べて低い感度の問題など、課題は多いが、多くの医療機関で導入されているSPECT装置による血流定量の意義は大きく、今後の改善が期待される。
 また、半導体SPECT装置を用いた前向き研究の結果も報告されてきている。2万人以上の患者をレジストリする国際多施設共同研究である「REFINE SPECT Study」のデータからは、本邦のOtakiらが、視覚的評価に負荷時の機能的虚血心筋量であるtotal perfusion deficit(TPD)を組み合わせた半定量値を用いることで、視覚的評価よりも詳細な患者の層別化が可能であると報告している6)。視覚的に正常と診断された患者においても、TPD高値では、MACE(major advanced cardiac event)が起こる可能性が高くなることが示されている。また、Hanらは、TPDが同値でも糖尿病患者のMACEのリスクが高くなることを報告し、より微細な所見の検討の必要性を提起している7)
 さらにREFINE SPECT Studyのデータを用いたAIの機械学習の方法論に基づくソフトウェアの検討も始まっている。こうした新たなアプローチから開発された画像診断技術が臨床的に有用なものとなり得るか、また、新たな技術を検討する上でどのような知識が必要か、我々もキャッチアップして行く必要があるだろう。

5)Agostini D et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2018; 45(7): 1079-1090.
6)Otaki Y et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2019; 13(3): 774-785.
7)Han D et al. Diabetes Care. 2020; 43(2): 453-459.