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3 造影剤腎症について

造影剤腎症(CIN)の定義

ヨード造影剤投与後、72時間以内に血清クレアチニン(sCr)値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上増加した場合をCINと定義されている。
CINとは、ヨード造影剤による腎障害のことで、造影後に腎機能低下がみられ、造影剤以外の原因(コレステロール塞栓など)が除外される場合に診断される。
一般的に腎機能低下は可逆的で、sCr値は3〜5日後にピークに達した後、7〜14日後に前値に戻る。症例によっては、腎機能低下が進行し、血液透析が必要となる場合もある。
CINの発症のリスクは腎機能低下に応じて増加するので、造影前にできるだけ直近のsCr値を用いて腎機能を評価することが重要である。
慢性腎臓病(CKD)の新しい重症度分類(表1)では尿タンパクとGFRの組み合わせによる評価が奨励されている。

表1 新しいCKD重症度分類
原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30-299 300以上
高血圧、腎炎
多発性嚢胞腎
移植腎、不明
その他
尿蛋白定量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15-0.49 0.50以上
GFR区分
(mL/分
/1.73m2
G1 正常または高値 ≧90      
G2 正常または軽度低下 60-89      
G3a 軽度〜中等度低下 45-59      
G3b 中等度〜高度低下 30-44      
G4 高度低下 15-29      
G5 末期腎不全(ESKD) <15      

重症度は、原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。
CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死亡発症のリスクをのステージを基準に、の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)
日本腎臓学会編「CKD診療ガイド 2012」より

CINの発生と予後との関係

Rudnick1)らは、CINは死亡率を増加させる因子であることを報告している。
CKD患者と非CKD患者、CIN患者と非CIN患者の4群に分類し、PCIを実施し1年後の死亡率について検討した。
その結果、CKD/CIN群における死亡率は31%、非CKD/CIN群は16%、CKD/非CIN群は15%、非CKD/非CIN群は11%となり、CKD患者がCINを発症すると死亡率は有意に高くなる結果が得られた。

CINとガイドライン

近年のガイドラインでは、eGFR 45mL/min/1.73m2未満の患者に対し造影を行う場合は慎重に実施すべきと記載されており、造影剤の減量や充分な補液が推奨されている2)
造影剤を用いることによるリスクとベネフィットの見極めが難しい場合は、他の検査を行うことも重要な選択肢である。

1)Michael Rudnick et al. Contrast-Induced Nephropathy: What are thetrue clinical consequences?: Clin J Am Soc Nephrol.3:263-272,2008

2)腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012