従業員座談会 核医学の未来を語る

課題とその解決のために

今後の課題を教えてください

  • Oさん

    現状では、心臓、脳および悪性腫瘍の診断・治療を行っている先生が主な核医学のユーザーですが、それ以外の領域でも、まだまだ核医学が役立つ領域(疾患)はあると思っています。

  • Aさん

    その可能性もあると思っていますので、心臓、脳および悪性腫瘍以外の疾患の調査も今後、もっと積極的に行っていくべきだと考えています。ただ、さまざまな診断方法がある中で、核医学診断でしか得られない情報は何なのかを十分に考える必要があります。

  • Tさん

    放射線科の先生は、核医学を良くご存じですが、その他の診療科の先生では、核医学をあまりご存じない先生もまだまだおられます。そういう先生方に核医学の良さを理解してもらえるような、積極的プロモーションの必要性を感じています。また、放射線科以外の先生方が積極的に利用できるような核医学診断薬のラインナップがまだまだ少ないことが問題点の一つではないでしょうか。

  • Kさん

    核医学検査ができる施設の多くは大病院です。比較的規模の大きい病院の先生方は核医学をご存知だと思うのですが、中小規模の病院の先生だと、あまり核医学に馴染みのない先生もおられるのではないでしょうか。ただ、中小規模の病院でも本当にいい薬だということを知っていただければ、大きな病院に紹介してもらって検査を実施することもできるわけですから、プロモーションは本当に重要だと思います。

核医学の普及に向け、他に必要なことはありますか

  • Oさん

    世の中に供給可能な量を増やすことも、普及に向けた貢献の一助になるのではと考えています。放射能そのものは製造量の限界というハードルもありますが、できるだけ多く製剤化できるように製造工程を効率化したり、製剤を長時間保存できるようにして医療機関で使いやすくしたりするなどの改良が必要と考えています。

  • Bさん

    全国の先生に興味を持ってもらう一つの方法として、学会と協力して働きかけるのも有効な手段だと思います。ある病気に対してこの核医学診断が有用といった具体的な事例を先生方に提案し、それに賛同してもらえる先生を探し、少しずつ増やしていくことで、新製品の研究開発への助けになり、核医学の普及につながるのではないでしょうか。

  • Tさん

    ニーズが先か、シーズが先かという話がありますが、やはりニーズがあると研究開発はスムーズに進むので、医療現場のニーズを的確に把握してそれに応えられる薬を創ることは大事だと思います。

  • Kさん

    半減期が極めて短いRIを用いた核医学診断薬を作っている施設(病院)があります。そのような施設の方、あるいは大学で核医学を研究されている先生方と連携し、一緒に核医学の発展のために何をすればいいのかを考えていく機会をできるだけ多く作っていくのも一つの方法だと思います。

  • Oさん

    核医学という領域にいろいろな先生が来てくれるような場を提供し、核医学をご存じない先生方にも、いつの間にか知ってもらえるような工夫ができたらよいと考えています。核医学はいろいろな病気に役立つ可能性があるわけですから。そのためには多種多様な新薬の開発が必要で、開発のパワーをより強化するために、その他研究機関の方に協力してもらえる体制を充実させ、開発を進めていく必要もあると思います。

  • Aさん

    有望な技術を持っている大学または研究機関の先生方と共同研究をしながら、一緒に新たなシーズを見つけ、並行して医師の方々にいろいろとお話を伺いながら、困っていること(ニーズ)を調査し、双方の意見を考慮しながら研究開発を実施していくことが、新製品開発の近道となる可能性があります。また、海外で実績のある診断薬を日本に導入して提供することも核医学普及の方法だと思います。

今後に向けた目標をお聞きかせください

  • Tさん

    いくらよい薬でも、結局は発売しないと使ってもらえません。できるだけ早く薬が承認されるように、エビデンスづくりを行う必要があると思います。完璧をめざした結果、開発に要する期間が長くなるようなことは避け、必要不可欠なエビデンス固めを優先し、できるだけ早く承認に持っていけるように努力したいと思っています。

  • Kさん

    近年は、研究成果は論文や学会発表に先駆けて特許出願を行うことがアカデミアも含めた一般的な傾向です。特許文献の調査から得られた先行技術情報を、研究開発部門全体と共有して、他者との重複研究を避けつつ、先行技術に比較してより一層有用な成果が得られるよう研究開発支援をしていきたいと考えています。また、発明発掘や発明相談等を積極的に行い、研究者の発明創作意欲を促進するための活動も行っていきます。

  • Aさん

    現状の診断方法で困っている疾患を探し、本当に核医学がそれにフィットできるかどうかを精査し、それに合うシーズの研究開発をなるべく数多く推進していきたいと思っています。また、開発計画の調整や渉外を担当している部署に所属しているので、研究開発が円滑に推進できるように、しっかりと研究資源を管理する必要があると考えています。

  • Bさん

    研究所で評価中の開発候補化合物を早く上市しないと、医療のニーズの変化に追い付けなくなります。他部署と連携をとって開発計画を立て、社内的調整を開発初期段階で済ませる。そして、医薬品医療機器総合機構とも適切な時期に摺り合わせ、社外の力も借りながら開発期間の短縮化を図っていきます。

  • Oさん

    安全性や反応収率の高い化合物を、工場で生産できる状態にして臨床開発部門に引き継いでもらうことも研究所の仕事です。そのためには工場との意思疎通が大変重要です。研究側でこのようにすれば製造できると言っても、工場でその製品を製造できなければ、開発につながりません。したがって、生産部門ともしっかりとコミュニケーションをとっていきたいと思っています。

ありがとうございました。