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50歳になったら年に1度はPSA検査を
前立腺がんからパパを守る!
監 修:九州大学病院 泌尿器科 教授 内藤 誠二

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【part1】日本の前立腺がんは近年急増しています。

前立腺がんは、中高年男性に多くみられるがんです。近年の高齢化、食生活の欧米化と検査精度の向上による正確な診断により、日本人の前立腺がん患者数は増えています。厚生労働省の調査(平成17年度)では、男性がんの中で患者数がすでに第1位となっており、年齢別では50歳代前半では第7番目、60歳代前半では第2番目、60歳代後半以降では1番多いがんです。

米国では、前立腺がん罹患(りかん)率(病気にかかる比率)は30年以上前から男性がんの中で最も高く、25年前より男性がん死亡原因の第2位であったため、社会問題になっていました。しかし、1980年代後半から普及した前立腺がん検診とその後の適切な治療の結果、1992年以降は死亡率が低下し始めています。

日本では前立腺がん死亡数は増え続けており、2009年は1万人以上が前立腺がんで死亡していると推定されています。また、死亡数は将来も増加し続け、2020年には2000年の約3倍になると予測されています。

前立腺がんは男性が最も気をつけなければいけないがんの一つであり、特に50歳代の男性からは気をつけなければいけません。40歳代の男性にとっては、すぐに治療が必要な前立腺がんが潜んでいる可能性は約3,000人に1人と低いのですが、最近、40歳のときの前立腺特異抗原(PSA)値が、将来、前立腺がんが発病するリスクを予知するための基礎値として有用であり、もし癌が発病した際に、適切な治療を選択するために役立つ可能性のある重要な指標であることが分かりました。
特に前立腺がんのリスクが高まる50歳以上から、人間ドック検診では、将来のがん発見時のメリットのために40歳代から定期的に検診を受けることが大切です。

男性におけるがんの罹患者数と将来予想/5歳階層別男性がん患者数ランキング

【part2】前立腺のはたらきと前立腺がん

前立腺の位置としくみ

前立腺とは、男性だけが持っている臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように位置しています。通常はクルミ程度の大きさで、形もクルミによく似ており、内部は中心部にある内腺と、辺縁部の外腺に分けられます。精液の一部である前立腺液を作り、精子の運動機能を助けるはたらきをしています。

中高年男性に多い前立腺の代表的な病気は、前立腺肥大症と前立腺がんです。

前立腺肥大症は、内腺が大きくなる良性の病気で、腫大した内腺が尿道を圧迫・刺激することなどで、「おしっこが出にくい」、「トイレの回数が多くなった」、「おしっこをしたあとすっきりしない」などの排尿に関する症状が現れます。

前立腺にできるがんを前立腺がんといいます。一般的にはがんの成長速度は緩やかで比較的おとなしいのですが、一部には急激に増殖するものもあります。多くは尿道から離れた辺縁の外腺にできるため、治療がすぐに必要な段階にまで大きくなっても、ほとんどの方は症状が出ないため、気づくことはありません。さらにがんが大きくなり、尿道などに浸潤した場合などには血尿や前立腺肥大症のような自覚症状が出ることはありますが、無症状のまま転移(主な転移部位は骨)をきたすことも時にあり、さらに転移が広がると「腰が痛い」などの症状が現れます。

【part3】PSA検査は前立腺がんを発見するための血液検査です。

前立腺がんの進み方

PSA検査とは、前立腺がんを発見するための血液検査で、PSA値が高いほど前立腺がんが疑われます。PSAとは、前立腺で特異的に作られるたんぱく質の一種で、健康な人の血液中にも存在します。しかし、前立腺の病気になると血液中に流出し、PSAが増加するため、前立腺がんの可能性を調べるとともに、早期発見のための指標として用いられています。

PSA検査はごく少量の血液があれば測定が可能で、通常の血液検査と合わせて簡単に行うことができます。

前立腺がん検診の最近の研究結果から、PSA検診の受診により前立腺がんで死亡する危険が低くなることがわかりました。

前立腺がんは、初期症状も少ないため発見が遅れがちですが、早期に治療すれば完治も十分に可能です。とくに、50歳を過ぎた方は、ご自身の健康管理のために、是非、前立腺がんに関心を持ち、定期的にPSA検査を受けることが、前立腺がん対策の第1歩として大切です。

PSA検査は、1)住民検診(約70%の市町村が実施;2009年度調査)、2)人間ドック(約90%の施設が実施;2007年度調査)、3)一般医療機関(何らかの排尿に関する症状があるなどでがんが疑われる場合には、ほとんどすべての医院・病院などの医療機関で実施が可能)で受けることができます。PSA検査の住民検診での対象年齢は、50歳以上が一般的ですが、人間ドックや、排尿に関する症状があり一般医療機関で検査する場合には、40歳からPSA検査を受けることができます。

【part4】PSA検診の受診で前立腺がん死のリスクが低下します。

PSA検診の受診によって前立腺がんによる転移、そして死亡のリスクが低くなることが証明されています。

欧州の大規模研究では、9年の間に死亡率が20%下がることが報告され、その後のスウェーデンの研究では、14年間のPSA検診の導入で、死亡リスクが約半減することが証明されました。また、検診開始から20年ほど経過した、オーストリアの研究では、60%以上も死亡率が低下しました(2010年米国泌尿器科学会での発表)。

米国では、1980年代の後半からPSA検診が普及し、現在は50歳以上の国民の4人のうち3人がPSA検査を受けているといわれています。検診の受診とその後の適切な治療によって、米国の前立腺がん死亡率は1992年から2006年の間に39%も低下しました。

日本では、依然として前立腺がん死亡数は上昇しており、年間1万人以上の方が前立腺がんで死亡しています*が、適切な間隔で定期的にPSA検査を受ければ、進行がんや転移がんでみつかる危険性が下がり、前立腺がんで死亡する危険が低くなることは間違いありません。

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平成21年人口動態統計月報年計(概数)の概況:第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),
死因簡単分類別:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai09/toukei6.html

群馬県における市町村の住民検診受診率と地域がん登録に占める転移がん症例比率

【part5】PSA値が高かったときはどうしたらいいのですか?

PSA検査の基準値は4.0ng/mℓ、あるいは年齢階層別PSA基準値(64歳以下:0.0-3.0 ng/mℓ、65-69歳:0.0-3.5ng/mℓ、70歳以上:0.0-4.0ng/mℓ)を用います。

PSA検査を受けると、約8%の方が基準値を超え“がんの疑いあり”となりますが、全員ががんであるわけではありません。(がんと診断される可能性はPSA値が高いほど高く、4-10ng/mℓであれば約30%、10〜20ng/mℓでは50%程度です)

PSA値が基準値を超えた場合、前立腺がんと肥大症・炎症などの良性の病気を鑑別する必要がありますので、泌尿器科専門医のいる精密医療機関を受診してください。精密検査では、PSA値再検査、経直腸的超音波検査(エコー検査)、直腸診などを行います。

超音波検査は、前立腺の形や大きさを調べるだけでなく、がんの部位や大きさがわかる場合があります。

直腸診では、医師が肛門から指を入れ、直腸の壁越しに前立腺に触れて診察します。前立腺の大きさや硬さ、表面の性状などの様々な情報から、前立腺がんの可能性を探る検査です。

これらの精密検査で、前立腺がんが疑われる場合には、確定診断のため前立腺針生検(はりせいけん)が必要になります。

また、PSA検査では、約90%の方はPSAが陰性になりますが、今後も前立腺がん検診を継続的に受けていただくことが大切です。PSA値が1.0ng/mℓ未満であれば、次回の検査は3年後、PSA値が1.0ng/mℓ以上であれば毎年の検査をお勧めします。

前立腺がん診断の流れ

【part6】前立腺針生検(はりせいけん)とはどのような検査ですか?

前立腺針生検

精密検査の結果から、がんが疑われる場合には、前立腺針生検を行います。針生検とは、前立腺の組織標本を直接顕微鏡で観察して、悪性(がん)か良性かを判断するものです。

顕微鏡の標本を作成するためには、肛門から超音波器具を挿入し、前立腺を観察しながら数ヵ所に細い針を刺して組織片を採取します。麻酔は局所麻酔や腰椎麻酔などで行われ、精密医療機関によって、外来での日帰り検査で行う場合と、1〜2泊の入院で行う場合があります。

前立腺針生検では、麻酔時の注射針を刺すときの痛みや生検時の軽い痛み(局所麻酔の場合)があります。 生検によって、発熱、直腸からの出血、尿に血が混じる、精液に血が混じるなどの合併症がおこることがありますが、重い合併症は極めてまれです。

悪性であった場合には、悪性度、つまりがんの性格を調べることで、その後のより適切な治療方法の選択が可能になります。

一方で、生検を受けても前立腺肥大症や炎症と診断される方もいます。生検で良性の病気と診断された場合でも、小さい前立腺がんが見逃されることもありますので、専門医と相談し、引き続き定期的にPSA検査を受けることをお勧めします。