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『ポイントで分かる「前立腺がん」』
朝日新聞に3週連続で掲載
8月16日(日)〜8月30日(日)
日本で急増している「前立腺がん」の現状とその予防について、3回シリーズでお届けします。
特別協賛:アストラゼネカ 協 賛:日本メジフィジックス株式会社、ベックマン・コールター株式会社

第一回「前立腺がん」
筧 善行 先生 第二回「前立腺がん検査」
伊藤 一人 先生第三回「前立腺がん 総集編」
内藤 誠二 先生

第一回「前立腺がん」
早期発見することで、効果的な治療ができます
香川大学医学部泌尿器科
教授 筧 善行(かけひ よしゆき) 先生

香川大学医学部泌尿器科教授。専門は泌尿器がんの治療。1981年京都大学医学部卒。2000年京都大学大学院医学研究科泌尿器病態学助教授を経て01年4月から現職。日本泌尿器科学会理事、日本癌(がん)治療学会理事、日本がん治療認定医機構理事などを務める。

中高年の男性に見られ、初期は無症状で発見が遅れがち

前立腺は男性だけが持つ臓器で、精液の一部を作る働きがあります。膀胱のすぐ下に位置し真ん中に尿道が通るため、前立腺に病気があると尿に何らかの症状が出やすくなります。
前立腺の病気には前立腺肥大症や前立腺炎などがありますが、一番問題になるのが急増している前立腺がん。他のがんに比べて緩やかに進行するのが特徴で、初期は無症状。少し進行しないと尿に症状は現れません。前立腺がどこにあり、どのような働きをするかを知る男性は少なく、初期症状がないことががんの発見を遅らせる一つの理由になっています。

男性のがんで増加率トップ 最たる原因は食生活

男性がかかるがんの中で、一番増加率が高いのが前立腺がんです。病気にかかる比率を表す罹患率は、2020年には00年の3〜4倍に増加するといわれています。前立腺がんは主に50歳以降にかかる病気で、60代後半に最も多く見られます。前立腺は男性ホルモンの影響を強く受ける臓器ですが、血液中の男性ホルモンが徐々に減少してくる高齢者が、逆に前立腺がんを発症しやすくなるのです。
前立腺がんが増えている大きな原因は、食生活の欧米化にあると考えられます。前立腺がんは40〜50年前から欧米で日本人の20〜30倍多く見られましたが、米国在住の日系2世も日本人の数倍〜10倍高い発症率がありました。当時の日本人は前立腺がんが少なかったのですが、食生活の欧米化とともに増加するのではないかと懸念されていました。現在その通りになってきているのです。
また、前立腺がんは家族内発生も多く、身内に前立腺がんの人がいればリスクは高くなりますから、より早期発見に努めていただきたいと思います。

早く見つけて適した治療を選ぶ まずはPSA検査を

前立腺がんを早期に発見できれば、がん細胞を体から全部取り除ける可能性が高くなります。たとえ根治しなくても例えばホルモン療法と放射線療法を組み合わすなどして、患者さんが本来持つ寿命に影響しないように、がんをコントロールしながら社会生活を送ることが可能です。
治療法は手術やシードという放射線を出す針を埋め込む小線源治療、待機療法など色々あり、がんを早く見つけられるほど選択肢は多くなります。早期発見に有効なのがPSA検査です。血液を採取するだけで前立腺がんの可能性を調べられ、掛かりつけ医や泌尿器科で検査を受けられます。まずはご自身のPSA値を知ることから始めましょう。

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第二回「前立腺がん検査」
50歳を過ぎたら、定期的に受けてください
群馬大学泌尿器科
准教授 伊藤 一人(いとう かずと) 先生

医学博士。1966年生まれ。90年群馬大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院助手、オランダ・エラスムスメディカルセンター泌尿器科研究員、群馬大学大学院泌尿器病態学講師、泌尿器病態学助教授などを経て同大学大学院医学系研究科泌尿器科学准教授。日本泌尿器科学会、日本内分泌学会、日本透析医学会、日本癌(がん)治療学会、日本がん検診・診断学会、米国泌尿器科学会、欧州泌尿器科学会に所属。

前立腺がんの発見に最も有効なPSA検査

無症状の前立腺がんを発見するための検査には主に三つあります。肛門から直腸に指を入れて診察する直腸診、直腸に専用の超音波装置を入れて反射(エコー)波を画像化する経直腸的超音波検査、採取した血液からPSA(前立腺特異抗原)値を測るPSA検査があります。
前立腺がんを見つけられる精度は、直腸診が約50%、経直腸的超音波検査が約40%、PSA検査が約90%と言われています。検診は限られた時間と人員で大勢の人を対象にします。PSA検査は採取した血液を調べるため、検査自体は泌尿器科の専門医でなくてもでき、前立腺がんを見つけられる精度も高いことから、日本泌尿器科学会は全国的な普及を推進しています。

がん検診の受診時にはメリットとデメリットの理解が大切

PSA検査のメリットは、前立腺がんを転移する前に発見でき、がんによる死亡の危険が確実に低下することで、米国では50歳以上の男性の約75%の人がPSA検査を受けています。PSA検査は、前立腺がんを見つける感度は約90%と非常に高く、毎年、継続して受診すれば96%〜97%の前立腺がんを発見することができます。しかし、もともとPSAを産生しない前立腺がんも3%〜4%あり、PSA検査だけでは見つけられません。
また、PSA検査で発見されるがんの中には、本来治療を行う必要がない、おとなしい性質のものも一部含まれており、結果的にこれらを治療してしまう可能性(過剰治療)があります。さらに治療による負担がQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を低下させてしまうこともあります。これがPSA検査の主なデメリットです。

定期的な健康診断に前立腺がんの検査を組み合わせて

排尿に関する何らかの自覚症状があり、医療機関を受診し、前立腺がんを含む疾患が疑われた場合、PSA検査は健康保険の対象となります。ほとんどの医療機関で検査が可能で、数時間から数日で結果が分かります。無症状の人は、住民検診や人間ドックなどで、オプションとしてPSA検査を受けることができるケースが多くなっています。この場合は数週間で結果が通知されます。実施についての詳細は、各市町村や検査機関にお問い合わせください。追加料金は、住民検診では不要〜千円程度、人間ドックでは、検査機関によって異なりますが、数千円程度です。ぜひ、ご自身の健康管理の一環として、定期的な健康診断時にPSA検査を組み入れることをお勧めします。
日本ではまだPSA検査自体が十分に認知されていないのが実態です。メリットとデメリットを正しく理解した上で、50歳を過ぎたら定期的に検査を受け、前立腺がんの早期発見に役立ててください。(談)

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第三回「前立腺がん 総集編」
早期発見・適切治療が何よりも大切です
九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野
教授 内藤 誠二(ないとう せいじ) 先生

1974年熊本大学医学部卒。80年九州大学大学院医学研究科博士課程単位取得の上退学、医学博士取得。九州大学医学部泌尿器科講師、助教授を経て98年から現職。日本泌尿器科学会理事長、日本癌(がん)治療学会理事などを務める。

症状が出る前に見つけて完治の可能性を高める

前立腺に生じる2大疾患には前立腺がんと前立腺肥大症があり、症状はよく似ています。肥大症は前立腺の内腺(尿道を取り巻く部分)に発生し、尿道の閉塞にともなって残尿感や頻尿、尿線が細くなるなどの症状が出やすくなります。前立腺がんは、前立腺の外腺(内腺の外側)に発生することが多いため早期は無症状です。がんが前立腺の中にとどまっているうちは症状はほとんど出ないのですが、進行して広がると症状が現れてきます。

死亡者数が増加 PSA検診の普及で歯止めを

日本では前立腺がんで亡くなる人が右肩上がりに増えています。2000年の死亡者数は7514人で、20年には約2万人になると予想されています。アメリカでは前立腺がんになる人は非常に多いのですが、死亡者数は減少傾向にあります。これは採血だけで前立腺がんの可能性を調べられるPSA検診が広く普及し、早期診断にともなって進行がんが減ったためと考えられています。
日本ではPSA検査が導入される約15年ほど前までは、前立腺がんの患者さんの半数以上は転移した状態で見つかっていました。しかし近年、PSA検診が普及している地域では、早期がんとして発見される人が6〜7割を占めるようになってきています。とはいえ、全国的には今も3割が転移がんで発見されるといわれます。進行がんを減少させるにはPSA検診のさらなる普及が必要でしょう。

メリット、デメリットを伝えいつでも検査可能な環境に

前立腺がんの発症を抑える有効な予防法は、今のところありません。そこで早期発見・適切治療が重要になります。それを実践できる良い方法がPSA検診です。ただ検診にはメリット、デメリットがあります。メリットは早期にがんを見つけられること。早く発見できればいろいろな治療法が選べ、多くの場合完治もできます。デメリットは検査した以上結果が気になりますし、異常値が出ればPSAを再検したり、その結果によっては最終診断のため生検(前立腺の組織を採取)が必要になります。生検をすると発熱や出血などの合併症を生じることがごくまれですが、あります。
私は50歳以上の男性にPSA検診を推奨しますが、みなさん一律に受けるべきだとは思っていません。前立腺がんの現状や検診のメリット、デメリットを正しく伝え、希望される方にはPSA検査を受けることができる検診の機会を設けておくことが大事だと考えます。検診に限らず、PSA検査は内科や泌尿器科で受けられます。前立腺がんで命を落とす人が増えている状況、検査のメリット、デメリットをよく理解していただきたいと思います。

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