透析療法と心疾患

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腎臓の働きと透析療法

泌尿器系の器官の一つで、体に不要な老廃物や多くの取り過ぎた物質を血液中からろ過し、尿として体外に排泄する働きを担っているのが腎臓です。この腎臓の働きが何らかの病気により悪くなってしまうことを「腎不全」と言い、腎不全が進行すると、体内の老廃物を十分排泄できなくなり、その結果、本来尿として体外に出されるはずの水分や老廃物質などが体内に溜まり体内バランスがくずれてしまいます。このような場合に、腎臓の働きを人工的に行う治療法が「透析療法」です。

透析患者数の現況

日本における透析患者様の数は2005年末で25万人を越え、年々増加傾向にあります。また、新規透析導入患者数および死亡数も年々増加傾向にあります。

年別透析患者数、導入患者数、死亡患者数の推移graph
透析療法と心疾患リスクの関係

上記のとおり透析療法を受けている患者様の死亡数は年々増加傾向にあり、中でも「心不全」「心筋梗塞」「脳血管障害」などの心臓や血管疾患で亡くなられる方が全体の約40%以上を占めています。心不全、心筋梗塞などの「心臓死」を引き起こす大きな要因は、心臓のまわりを取り囲み、酸素や栄養を送る役目をする血管「冠動脈」の動脈硬化による「冠動脈疾患」によるものです。透析患者様の60~70%が冠動脈疾患を発症しているという研究報告もあり、また、透析導入後早期に発症する場合が多いことが分かっています。しかし、冠動脈疾患を発症しているにも関わらず、自覚症状が無い「無症候性心筋虚血」が多いこともあり、発見が遅れてしまいがちです。特に、高齢者や糖尿病を患っている場合は発症リスクが高いので、自覚症状がなくても早めに心臓の検査を受けることが大切です。

透析患者の死亡原因graph
早期診断 心臓核医学検査でわかること

このように透析患者の方々は、心臓死のリスクが高いので、冠動脈疾患を少しでも早く検出・診断し、治療を始めることが、より良い生活を送るための第一歩となります。一般的に心臓の検査は、問診・聴診から始まり、(1)心電図検査(2)画像診断(核医学検査、エコー、冠動脈CTなど)(3)冠動脈造影の順で行われます。心臓核医学検査は、狭心症や心筋梗塞などの心臓病の有無やその程度を診断することが可能で、かつ、患者様の肉体的負担が少なく安全に検査できることが特徴です。

心臓核医学検査の利点・欠点(他の検査法との比較)
  • 患者様の肉体的負担がごくわずかである。
  • 冠動脈CTでは診断困難な箇所の判定も可能(動脈硬化による石灰化で血管が非常に狭くなっている場合など)。
  • 運動負荷心電図よりも診断精度が高い。
  • 運動負荷が困難な場合でも薬物負荷検査が可能。
  • 心事故予測に関するエビデンス(根拠)が豊富。
  • 検査入院が不要で副作用も少なく安全。
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