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前立腺がんの早期発見・早期治療 ―からだにやさしい治療を考える―

放射線による治療-小線源療法を中心に 独立行政法人国立病院機構埼玉病院泌尿器科医長 門間哲雄先生

放射線治療には大きく分けて外部照射と組織内照射(小線源治療)があり、外部照射には全骨盤照射、回転しながら、あるいは4方向、6方向から照射する方法、立体的にターゲットを絞って照射する3次元原体照射、強度変調放射線治療(IMRT)、大掛かりな施設を要する粒子線治療があります。

しかし外部照射では、ミリ単位で正確にターゲットを照射する計画をたてても、直腸のガスなどにより前立腺の位置が少し動いてしまう可能性があります。この点を解決する方法が、小線源療法です。前立腺の内部から照射する方法で、エネルギーの低い放射性線源を永久挿入する低線量率照射と、少しエネルギーの強い放射性線源を一時的に挿入する高線量率照射があります。本日は低線量率照射についてお話しします。

小線源療法の概要図2−aは、実際に挿入されるシードと呼ばれる密封線源で、直径1mm長さ5mm程度のものです。各々の線源から放射線が出ています。経直腸エコーを参考にしながら陰嚢と肛門の間の会陰部から針を刺して(図2−b)50〜80個のシードを前立腺に入れていきますと、治療後には図2−cのように前立腺の形に添ってシードが挿入されていることが確認できます。前立腺内に線源を直接挿入することで、放射線を前立腺へ正確に多く照射し、かつ直腸、膀胱、尿道など周辺組織が受ける照射量を少なくして合併症を防ぐ理想的な放射線療法です。

線源はチタンでできたカプセルの中にヨウ素125という非常に弱い放射線を発する化合物を入れてあります。人体の中で2cm程度線源から離れれば放射線量は半分になります。時間的に放射能が半分になるのは約2ヵ月、約一年経つとゼロに近くなります。つまり、小線源療法では、一つずつの線源は弱く安全なものですが、それを集中すれば前立腺で強くなり、時間経過とともに弱くなってきて、やがて作用がなくなります。

小線源療法は約15年前からアメリカで行われてきて、2006年には8万件にのぼるといわれています。日本は放射線の管理が厳しいため2003年9月に遅れて開始しましたが、2006年には全国で2200例の小線源治療が実施されたにすぎず、今後この療法が更に普及していくことを確信しております。

小線源療法を受けるには、がんが前立腺被膜内に留まっていることが絶対条件で、周りに広がっているものは適応となりません。また、前立腺がんは非常に進行が遅いので、5年以上の余命が見込まれること、麻酔に耐える体力があることも条件です。

前立腺の大きい方も対象となりませんが、治療前にホルモン療法で体積を小さくさせてから施行する方法もあります。また、前立腺肥大症の手術を過去に受けた方も適応外ですが、術後ある程度時間が経過すれば適応となることもあります。治療前から強い排尿症状のある方、過去に放射線をかけたことのある方、直腸の手術をした方、重症糖尿病など全身状態が不良な方、治療体位がとれない方、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬を中断できない方も対象となりません。

適応の条件を満たしていると診断された方のなかでも、実際に治療をするとがん細胞が周囲組織に飛び出していることは稀ではありません。こうした通常の小線源治療の手技でカバーできない部分には外部照射の併用を行います。

独立行政法人国立病院機構埼玉病院泌尿器科医長 門間哲雄先生線源は米国からの輸入であり、また保存ができないため、治療の2週間以上前に治療計画を立てるために前立腺の形や大きさなどを測定して線源使用量を決めて発注します。届いた時点で入院となり、入院2日目に治療を行い、当院の場合は3泊4日で退院となります。その4週間後にもう一度CTまたはMRI撮影で評価し、この時点で外部照射併用の方は治療を開始します。

実際の治療は、泌尿器科医と放射線科医との共同作業にて行います。実際に挿入した線源による放射線照射範囲をコンピューター上で計算し、照射が足りない部分には線源を追加するようにして線源の配置を決めていきます。腰椎麻酔にて治療を行い、治療時間約1〜2時間、出血量は非常に少なく輸血の心配はありません。

日本での小線源療法はまだ開始してから3年程しか経過していないので解析には時期尚早ですが、米国の小線源単独療法における非再発率は15年で86%と、この治療法の有効性が示されています。外部照射併用でも70〜80%です。PSA値、グリソンスコア(生検で採取した前立腺がん組織の悪性度を10点満点で表す指標で、高いほど悪いとされる)が高い高リスクといわれている患者さんではどの治療法でも、非再発率が50%以下と報告されており、高リスクの患者さんに対しては効果があまり期待できません。

小線源療法の副作用は、前立腺や直腸に放射線がかかることで生じる排尿症状と排便症状が挙げられますが、いずれも軽微で半年から一、二年で症状が軽快します。小線源治療は、早期前立腺がんに対するからだにやさしい治療です。

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