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メタストロン注〔塩化ストロンチウム(89Sr)〕による骨転移の疼痛緩和治療

7. ストロンチウム-89治療のQ&A

この医師用Q&Aは、有痛性骨転移の疼痛緩和を目的とした本剤又は他の放射性医薬品に関する公表論文、総説及びガイドラインを参考に作成されたものです。したがって、独自にresearch questionを設定し、systematic reviewによりanswerを作成するという手順に従って作成されたものではありません。


Q1
本剤はどのようながんにでも使用できますか? 
Q2
本剤の添付文書において、骨髄抑制をもたらす抗悪性腫瘍剤を使用中の患者では併用注意、また、使用予定のある患者では慎重投与となっていますが、骨髄抑制をもたらす抗悪性腫瘍剤とは、どのようなものでしょうか?
Q3
添付文書において、本剤と外部放射線照射(外部照射)とは併用注意、また、外部照射の治療中及び予定のある患者では、慎重投与となっていますが、外部照射との関連においてどのような考慮が必要でしょうか?
Q4
播種性血管内凝固症候群(DIC)に関連し、患者選択において注意すべきこと、また、本剤投与後に急激な血小板減少などが生じた場合の対処法などについてご質問します。
Q5
本剤の複数回投与において有効性及び安全性、また、注意すべき点はどのようなものでしょうか?
Q6
ビスホスホネート(BP)投与例において、骨シンチグラフィを撮り直す必要はありますか?
Q7
現在症状を有しない症例で、将来的な疼痛の出現を抑制するために、予防的に投与することは有用ですか?

Q1.本剤はどのようながんにでも使用できますか? 

A

本剤の「効能又は効果」は以下のとおりです。

「固形癌患者における骨シンチグラフィで陽性像を呈する骨転移部位の疼痛緩和」

したがって、骨シンチグラフィを実施して、疼痛部位において放射能の集積増加がみられること、すなわち、その部位で造骨活性があり、本剤が疼痛部位に集積することを事前に確認できる固形癌であれば投与の対象となります。

なお、多発性骨髄腫は血液のがんであり、また、溶骨型の骨転移(浸潤)が主であるため、本剤の「効能又は効果」の対象とはなりません。

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Q2.本剤の添付文書において、骨髄抑制をもたらす抗悪性腫瘍剤を使用中の患者では併用注意、また、使用予定のある患者では慎重投与となっていますが、骨髄抑制をもたらす抗悪性腫瘍剤とは、どのようなものでしょうか?

A

添付文書「重要な基本的注意」の記載は以下のとおりです。

骨髄抑制をもたらす抗悪性腫瘍剤又は外部放射線照射による原疾患に対する治療を行っている患者、又は治療を予定している患者に対する本剤の使用は、原疾患に対する治療が施行できなくなる場合があるので、慎重に患者選択を行うこと。


抗悪性腫瘍剤は、殺細胞性抗悪性腫瘍剤、ホルモン剤、生物学的製剤及び分子標的剤などに分類されます。このうち、殺細胞性抗悪性腫瘍剤、いわゆる抗がん化学剤(アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗がん抗生物質、白金化合物)は、細胞分裂が活発な細胞に対しDNA合成やDNA機能を阻害して殺細胞効果を発するため、ほとんどの薬剤が細胞増殖の速い骨髄、消化管粘膜などの他の正常細胞にも細胞毒性をきたします3-5)。骨髄 抑制の頻度も多いため併用注意となります。

一方、それ以外のホルモン剤、生物学的製剤及び分子標的剤は、作用機序が異なり骨髄抑制の発現頻度が少ないため併用の影響は少ないと考えられます。

本剤との併用で特に注意すべき製剤は、骨髄抑制を主たる副作用とするもので、グレード3以上の骨髄抑制の副作用が、一定頻度(20%以上)でおこるものが一つの目安とできます。発現頻度が5%以下のものは影響が少ないと考えられます。但し、薬剤個々の添付文書やインタビューフォームなどで副作用の発現頻度を確認するとともに、患者側の前治療歴や残存骨髄機能を充分に考慮し、個々に対応すべきです。


*ホルモン療法で使用されるエストラサイトはアルキル化剤との合剤なので併用注意ください。

 

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Q3.添付文書において、本剤と外部放射線照射(外部照射)とは併用注意、また、外部照射の治療中及び予定のある患者では、慎重投与となっていますが、外部照射との関連においてどのような考慮が必要でしょうか?

A

海外ガイドラインにおける外部照射と本剤あるいは他の骨性疼痛緩和の放射性医薬品との併用については、以下のような記載がされています。


〔海外のガイドラインにおける外部照射の併用に関する記載〕

全身照射や半身照射などの広範囲な外部照射では高度な骨髄抑制がある。このため、半身照射後2〜3ヵ月6-7)、又は、放射性医薬品の投与前4週間及び投与後8週間の間隔をあけること8)が推奨されています。

一方、局所への外部照射(以下、局所外部照射)との併用に関する記載は以下のとおりです。

全身の骨髄の<15%の放射線照射は、非可逆的な骨髄抑制を伴わずに放射性医薬品の治療に併用できる8)

患者の血液学的状態が十分保たれていれば、病的骨折、脊髄圧迫の予防を目的としたものや、骨性疼痛が特に顕著な部位を対象とした局所的な外部照射は、放射性医薬品との併用が可能である6-9)

局所外部照射との併用により、疼痛緩和の有益性が増す8)、又は、病態の進行を抑えて鎮痛薬の必要性も低減する10)

なお、「本剤を局所外部照射に対する補助療法として日常的に使用することは推奨されない」と記載したガイドライン11)はあるが、前述のとおり、骨髄抑制作用の観点から明確に本剤と局所外部照射の併用が推奨されないと記載したガイドラインはみられない。

半身照射などの広範で骨髄抑制作用が著しい外部照射は、本邦ではほとんど実施されません。実施された場合には、本剤による治療と適切な間隔をあける必要があります。

局所外部照射、特に全身の骨髄の<15%の放射線照射による骨髄抑制は、臨床的に問題ないと考えられます。したがって、そのような局所外部照射と本剤の併用は、患者の治療歴と血液学的検査所見などを基に骨髄予備能を判断し、リスク.ベネフィットの観点から適切に判断してください。もし併用された場合には、血液学的検査等により患者の骨髄機能を慎重に評価して、必要に応じ適切な医学的処置を行ってください。

ただし、広範囲な骨(脊椎など)に放射線治療が行われたり、大量がん化学療法が行われているなど、すでに骨髄機能の高度低下(正常下限以下)を来した患者に対しては慎重投与、また、重篤な骨髄抑制のある患者では禁忌となります。

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Q4.播種性血管内凝固症候群(DIC)に関連し、患者選択において注意すべきこと、また、本剤投与後に急激な血小板減少などが生じた場合の対処法などについてご質問します。

A

本剤投与後に骨髄抑制が発現する可能性があり(添付文書の警告欄参照)、本剤の適正使用マニュアルにDICに関し以下の記載があります。

除外基準 〜適正使用マニュアル臨床編 3-7適切でない患者
播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断された患者又は急激な血小板減少がみられる患者。

*本剤によりDICが誘発されることはないと考えられているが、投与後に重篤な血小板減少を誘発する危険因子となる ため、DICを伴う患者、特に急激な血小板減少がみられる患者では、その危険性を十分に考慮し、血液学的機能が不十分な症例は安全性の観点から除外するべきである。

本剤の適応患者の選択においては、上記注意事項に加え、下記の事項も十分に配慮し、慎重かつ適切にDICの評価を行った上で患者選択し、本剤投与後に急激な血小板数の減少がみられた場合は適切な処置をしてください。


1.患者選択・投与前の注意点
投与前検査で厚生労働省のDIC診断基準(3.臨床適応 表2)をもとに診断し、DICと診断された場合は本剤の投与対象から除外します。また、DIC疑いの場合もできる限り除外します。トロンビン・アンチトロンビンV複合体(TAT)の検査も推奨されます。DICが疑わしい場合は、骨髄生検や骨髄穿刺検査を実施し、腫瘍の骨髄浸潤の有無を確認して、DICの原因を明確にします。


本剤の選択基準は、血小板数については7.5万/mm3以上ですが、血小板数がこの値を満たしても、急激な血小板数の低下がある場合は、DICを疑う必要があります。長期の化学療法の施行例や広範な骨転移を有する患者では、本剤の適応決定後、投与前日又は当日の朝に再度血液検査を実施して、急激な血小板数の低下がないかご確認ください。本剤投与後にDICが発現した場合、本剤による骨髄抑制との相互作用で血小板数が急激に減少することが予測されます。

DICの診断・疑いがあれば、血液内科専門家と相談の上、適切な処置を行ってください。


2.投与後の急激な血小板減少への対応
本剤投与後に急激な血小板数の減少がみられた場合は、臨床検査にてDICの有無を確認し、血液の専門医に助言を求めた上で骨髄穿刺などの必要な検査を実施して、安全性を確認した上で治療を行っていただくようお願いします。


なお、本剤の骨髄抑制による血小板数の減少であれば、血小板輸血で血小板数の回復が見込まれますが、DICが発現している場合は、血小板輸血だけではかえって増悪する場合があり、低分子ヘパリンやトロンボモジュリンなどの投与等適切な処置が求められます。

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Q5.本剤の複数回投与において有効性及び安全性、また、注意すべき点はどのようなものでしょうか?

A

反復投与を行う場合には、前回投与から3ヵ月以上の間隔をとり、かつ骨髄機能回復を確認してください。

前回投与時に無効であった患者には再投与すべきではありません。

その他の選択基準に関しても、初回投与時と同様の選択基準で適応を決定するとともに12)、同様の注意事項を遵守して本剤による治療を行ってください。

骨髄毒性の危険性に関しては、反復投与ごとに増加すると考えられます6)。また、反復投与時の奏効率及び効果持続期間に関しては、疾患の進行により一般状態が低下することを反映して、初回投与時より低下・短縮すると欧米のガイドライン等 6-7)に記載されています。

一方、前立腺癌、乳癌及び肺癌を中心とした118例における複数回投与(のべ256回、最多5回)の臨床研究では、有効性を無効及び軽度改善、改善、著効で評価したところ、無効は初回投与における5例(4.2%)のみで、(無効例での反復投与はなかったものの、)複数回投与における有効性は回が増すごとに改善・著効例の割合が増加し、効果持続期間も延長した(特に、乳癌で平均3.1ヵ月から5.3ヵ月)とされ、また、血小板及び白血球の25%以上の低下は、全体の10%でみられたのみであったという報告もあります13)

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Q6.ビスホスホネート(BP)投与例において、骨シンチグラフィを撮り直す必要はありますか?

A

ビスホスホネートと本剤の投与間隔については個々の患者の状況により変わりえることから、両者の投与が近い場合もあります。その場合でも、すでに骨シンチグラフィにより疼痛部位が陽性であることが確認されている場合は、両者の投与が近いからといって、改めて骨シンチグラフィを行う必要はないと考えます。

なお、欧米の核医学会のガイドライン6-7)においては、有痛性骨転移の疼痛緩和のための放射性医薬品の投与2週間以内にビスホスホネートが投与された患者では、放射性医薬品が骨転移部位に集積することを骨シンチグラフィで確認すること、また、放射性医薬品投与後48時間はビスホスホネート治療を控えることとの記載があります。これは、当該ガイドラインは本剤のみならず、153Sm-EDTMPも対象としており、骨シンチ用製剤及び153Sm-EDTMPはいずれもビスホスホネートの一種であることから、骨転移部位のハイドロキシアパタイトにおける両者の集積が競合するため、このように記載されたものと考えられます。

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Q7.現在症状を有しない症例で、将来的な疼痛の出現を抑制するために、予防的に投与することは有用ですか?

A
本剤は骨転移による疼痛を有する患者における疼痛緩和のみを目的とした放射性医薬品です。したがって、無症候の患者に対して本剤を予防的に使用することはできません。

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【参考文献】

3) 内科 Vol.100 No.6 1062-1071、2007

4) 臨床腫瘍学3版日本臨床腫瘍学会編、癌と化学療法社、2003年、東京

5)血液/腫瘍学シークレット マリー・E.ウッド、ジョージ・K.フィリップス/編、メディカル・サイエンス・インターナショナル2004年、東京

6) Society of Nuclear Medicine Procedure Guideline for Palliative Treatment of Painful Bone Metastases ver.3.0.

7) Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2003, 30: BP7-11.

8) Practice Guideline Report #14-1 Program in Evidence-based Care . A Cancer Care Ontario Program State/Local Government Agency. Jun 15 2004

9) Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006, 64:1299-307.

10) Prostate Cancer(PDQR):Treatment Health ProfessionalRecurrent Prostate Cancer National Cancer Institute Last Modified: 05/25/2006

11) Practice Guideline Report # 3-6 Program in Evidence-based Care . A Cancer Care Ontario Program State/Local Government Agency. Nov 23 1997(Updated Oct 2001).

12) Lancet Oncol. 2005, 6: 392-400.

13) Eur J Nucl Med 1998, 25: 1362.67.